AI社員実践記では、AIの機能紹介ではなく、実際にオフィスピコッツの仕事の中へAIを入れてみて、「どこまでできるのか」「本当に仕事が楽になるのか」を試しています。
今回試したのは、Cloudflareが公開した「Cloudflare OS」です。
最初に公式ページを見たとき、気になったのは「AIとチャットできる」という部分ではありませんでした。
会社専用のAI環境を作り、その中でAI自身に業務用のアプリまで作らせることができる。
ここです。
それならオフィスピコッツでも使えるのではないか。
そう考えて、実際に自社のCloudflareアカウントへ導入してみることにしました。
結果から言うと、AIに日本語で、
「顧客フォロー管理アプリを作ってください」
と頼んだだけで、顧客の追加・編集・削除・保存までできるWebアプリが、本当に動きました。
一方で、試してみたからこそ見えてきたこともあります。
「アプリを作れる」ことと、「そのアプリを毎日の仕事で使う価値がある」ことは別です。
今回は、その途中経過も含めて紹介します。
まず、オフィスピコッツ専用の「PIKOZ OS」を作った
Cloudflare OSは、Cloudflareが2026年8月にオープンソースとして公開した、AIエージェント・アプリ・業務のためのプラットフォームです。
Cloudflare公式では、自社のCloudflareアカウントへ導入し、自社独自のAccessポリシー、AI Gateway、データ、外部システムとの連携などを組み合わせて利用できるものとして公開されています。インターフェースや社内向け機能も会社ごとにカスタマイズできます。
今回はCloudflare OSをそのまま使うのではなく、名称を、
PIKOZ OS
に変更しました。
オフィスピコッツ専用のAI業務環境、という位置づけです。

導入自体は「ボタンを一つ押したら終わり」というほど簡単ではありませんでした。
Cloudflare Zero Trust、R2、Workers、AI Gatewayなどを順番に設定し、今回の環境ではWorkers Paidの月額5ドルも必要になりました。
さらに、実際の顧客情報を扱う可能性があるため、途中でセキュリティ設定も見直しました。
新規ユーザー登録を停止し、Cloudflare Accessでアクセスできるメールアドレスを限定。さらにGoogle Authenticatorを使った多要素認証も設定しました。
AI Gatewayでは、プロンプトやAIの回答内容を保存するログをOFFにし、AIへの大量アクセスを防ぐためのRate Limitも設定しています。
Cloudflare OS自体も、エージェントや生成されたアプリには最初から外部サービスへのアクセス権を与えず、明示的に許可したリソースだけを利用させる考え方で設計されています。生成されたサーバーコードからの外部通信も、明示的に与えた能力を除いて制限されます。
ここは「AIに会社の情報を見せる」という使い方を考えるうえで、かなり重要なポイントだ感じました。

AIに「顧客フォロー管理アプリを作って」と頼んでみた
環境ができたので、いよいよAI社員に仕事を頼んでみます。
今回の実験用に選んだのは「顧客フォロー管理」です。
既存顧客、過去顧客、見込み客について、
顧客名、担当者、現在の状況、最終接触日、次にすること、次回フォロー予定日、優先度、ステータス、メモなどを管理し、「今日連絡すべき相手」が分かるアプリを作ってもらうことにしました。
指示の中では、
「顧客の追加・編集・削除ができること」
「優先度やステータスで絞り込めること」
「日本語のシンプルな業務画面にすること」
「まずは外部サービスへ接続せず、このアプリ内だけでデータを保存すること」
などを指定しました。
プログラムコードは1行も書いていません。
日本語でやってほしいことを説明しただけです。
するとAIがコードを書き始めました。

Cloudflare OSでは、こうして作られるアプリは単なる画面イメージではありません。
Cloudflare公式によると、作られるアプリにはブラウザ側のクライアントコードとサーバー側のコードがあり、アプリごとの状態を保持するデータベースも持ちます。つまり、その場限りのモックではなく、実際に操作できるフルスタックのアプリとして動きます。
数分後、本当に顧客管理画面ができた
しばらく待つと、右側に「顧客フォロー管理」の画面が表示されました。
検索、優先度、ステータスによる絞り込みがあり、「顧客を追加」というボタンもあります。

ここまでは、まだ「見た目ができただけ」の可能性もあります。
そこで、実際にデータを入れてみました。
「テスト顧客」というダミーデータを登録し、
現在の状況、次にすること、次回フォロー予定日、優先度、ステータスなどを入力します。
登録すると一覧に表示され、「要対応1件」「8日以内にフォロー1件」といった集計も自動的に変わりました。

次にブラウザを再読み込みしてみます。
データは残っています。
編集して、再び読み込みます。
変更後の内容も残っています。
削除も試しました。
削除も正常に動きました。
つまり、
「追加」
「保存」
「編集」
「削除」
という、業務アプリとして最低限必要な一連の処理が本当に動いています。
私の環境では、最初のアプリ生成時に画面上に表示されたAI利用コストは約0.05ドルでした。
「使いにくい」と言ったら、AIが自分で作り直した
最初の画面は機能的には動いていましたが、一つ問題がありました。
項目が多いため、横スクロールが発生していたのです。
業務で毎日使う画面としては少し見づらい。
そこで再びAIへ、
「重要な項目を優先して表示し、横スクロールをできるだけなくしてほしい」
「次回フォロー予定日が近い顧客を上に表示してほしい」
「期限を過ぎている顧客を最優先にしてほしい」
「今日までに対応が必要な行と、8日以内の行を色分けしてほしい」
「保留の場合は保留理由を入力できるようにしてほしい」
と頼みました。
すると既存データを維持したまま、AIがアプリを修正しました。

今度は横スクロールがほぼなくなり、一覧には業務で重要な項目だけが表示されています。
次回フォロー日まで「残り1日」といった表示も加わりました。
「保留理由」も編集画面へ追加され、保存後に再読み込みしても残っています。
ここまでの改良を含めたAI利用コストの表示は、私の環境では累計約0.15ドルでした。
もちろん、利用するAIモデルや指示の内容、修正回数によって費用は変わります。
それでも、「こんな画面にしてほしい」と日本語で説明しているうちに、実際に動く社内ツールが修正されていく体験は、これまでのAIチャットとはかなり違いました。
ここで一度、「そもそもこのアプリは必要なのか?」と考えた
ここからが今回、一番大事だったところです。
アプリが完成したので、実際の顧客情報を登録し始めました。
ところが途中で、
「これ、そこまで必要なんだろうか?」
と思いました。
顧客名、現在の状況、次回フォロー日を入力して管理するだけなら、Googleスプレッドシートでもできます。
もちろん今回作ったアプリの方が見やすく、AIが自由に改良してくれる面白さもあります。
しかし、わざわざ別のアプリへ顧客情報を入力し続けるのであれば、それに見合うだけのメリットが必要です。
ここで気づいたのが、
「AIでアプリを作れる」こと自体を目的にしてはいけない
ということでした。
これはホームページ制作でも似ています。
「この機能を付けられるから付ける」のではなく、「本当に仕事が楽になるのか」「使い続けるのか」を考えなければ意味がありません。
AIアプリも同じでした。
今回の顧客フォロー管理は、Cloudflare OSがどこまでできるかを確認する試作品としては大成功です。
しかし、オフィスピコッツで今すぐ本格運用するなら、この用途が最適かというと、まだ分かりません。
むしろ「AIだからこそ意味がある仕事」に使いたい
今回の実験を通して、次に試したい方向も見えてきました。
たとえばオフィスピコッツでは、プレスリリースサイトの運営で、
掲載希望の情報を受け取る
→内容を整理する
→原稿を作る
→サンプルを作る
→確認をお願いする
→修正する
→公開する
→公開後の連絡をする
という一定の流れがあります。
単なる一覧管理ではなく、その途中でAIが原稿を作り、修正内容を整理し、確認メッセージまで作る。
ここまで一つの環境で進むのであれば、スプレッドシートとは違う価値が出てきそうです。
Cloudflareも、Cloudflare OSを固定されたアプリを使うための仕組みではなく、一人・一案件・一チームのためにAIが必要なアプリを作り、そのアプリ自体を後からAIで変更できる環境として説明しています。
この部分は、今回実際に触ってみてよく分かりました。
Google連携にも進みかけたが、今回は止めた
実は、このあとGoogle SheetsやGmailとつないでみようともしました。
Google Cloud側にPIKOZ OS専用プロジェクトを作り、Google Sheets APIとGoogle Drive APIを有効化し、OAuthクライアントの作成まで進めています。
しかし、Cloudflare OS側へGoogle連携を追加する段階になると、Gatekeeperという外部サービス連携用Workerを追加する必要がありました。
さらにローカルPC側へNode.jsなどの開発環境も必要になってきます。
そこで、
「ここから先はCloudflare OSを試す作業ではなく、PIKOZ OSへGoogle連携機能を実装する作業だ」
と判断して、いったん止めました。
今回の目的は、「会社専用AI環境を作ると、実際に何ができるのか」を確認することです。
その目的はすでに達成しています。
必要性が確認できてからGoogle連携へ進めば十分です。
この切り分けも、実際にやってみなければ分からなかった部分でした。
今回分かったこと
Cloudflare OSを実際に導入して感じたのは、AI活用が少し次の段階へ進み始めている、ということです。
これまでは、
「文章を書いて」
「調べて」
「アイデアを出して」
と、人間がAIへ仕事を頼み、その回答を別のソフトへ持っていく使い方が中心でした。
今回のPIKOZ OSでは、
「この仕事をするためのアプリを作って」
と頼むところから始まりました。
しかも、そのアプリは実際にデータを保存し、後から「ここを直して」と頼めばAI自身が変更します。
CloudflareはCloudflare OSをオープンソースとして公開しており、各企業が自社の業務、知識、ルール、システムに合わせて作り変えることを前提にしています。
これがうまく業務に入れば、AI社員は単に質問に答える存在ではなく、
自分で必要な道具を作り、その道具を使って仕事をする存在
に近づいていくのかもしれません。
ただし、今回の実験で同時に分かったのは、
作れるからといって、何でも作ればいいわけではない
ということです。
実際の仕事で使うのか。
入力の手間より楽になるのか。
既存の仕組みより良いのか。
AIが入ることで初めて価値が出る仕事なのか。
そこまで考えて初めて、AI社員が会社の中で本当に役立つのだと思います。
今回作った「顧客フォロー管理」は、いったん試作品として残しておきます。
次は、もっと「AIがいる意味」が出る仕事を選んで、PIKOZ OSを試してみる予定です。
AI社員実践記は、まだ続きます。
おわりに
オフィスピコッツでは、こうしたAIの業務活用を自社で日々実験しながら、その経験をもとに、京都・滋賀の事業者さまのAI活用やDXのご相談に対応しています。
「うちの業務だと、どこからAIを使えばいいのか」という段階のご相談も歓迎です。まずは現状の整理からご一緒します。
京都産業21 登録専門家(No.46)/滋賀県DX協創パートナー/デジタル庁 デジタル推進委員。2002年開業、創業25年目。京都・滋賀を中心に1万件超のWeb活用・制作に携わる。 会社概要を見る

