
百三十年の煙が語る静寂のレシピ
試香日誌に眠っていた物語と多言語ECで、
老舗お香工房はオンライン売上を100日で2.9倍に伸ばしました。
その具体的なプロセスを解説します。
序章──煙と共に消えかけた香り
京都市右京区に工房を構える「薫玉堂月影苑」は創業明治26年、社寺の焼香や茶道家元向けの調香で知られてきました。しかしコロナ禍で観光需要が激減すると、仁和寺や龍安寺の門前に並ぶ土産店からの卸注文が半減し、年商はピーク時の62%にまで落ち込みました。百貨店の催事も次々と中止になり、三代目の黒川悠介さんは「香りを焚く文化ごと消えてしまうのでは」と危機感を抱いていました。
工房の公式サイトは2009年に立ち上げた静的HTMLのまま、スマホでは文字が小さく読みにくく、英語情報は商品のローマ字読みのみ。世界的な禅やマインドフルネスブームで京都のお香に注目が集まる中、検索経由の問い合わせは月に3件程度と機会を逸していたのです。
出会い──オフィスピコッツと祖母の試香ノート
黒川さんが当社に相談に訪れたきっかけは、同業の線香メーカーがEC化で海外売上比率を25%に伸ばしたという記事でした。初回ヒアリングで私たちが最初に見せてもらったのは、創業者の妻が大正期に書き残した「試香日誌」でした。250種類以上の香原料を組み合わせた配合メモに加え、寺院の伽藍で焚いた際の煙の流れまでスケッチしてある貴重な一次資料です。黒川さんは「古くて難読だから」と公開をためらっていましたが、そこにこそ唯一無二の物語価値が眠っていると確信しました。
物語設計──四幕構成で心を動かす
- 主人公 三代目香司・黒川悠介さん
- 目標 京都の香文化を世界の瞑想空間に届ける
- 困難 オンラインで発見されず、香りは体験されない
- 解決 試香日誌を核にしたストーリーテリングと多言語EC
サイト構築──香りを可視化するUX
ファーストビュー
3:2の横長動画で、沈香片が火中で赤く輝き煙が揺らめく様子をスローモーション撮影。キャッチコピーは「百三十年の煙が語る、静寂のレシピ」。音は消し、無音で立ち上る煙の動きだけで没入感を演出しました。
情緒と機能の融合
- 香調シミュレーター 4つの質問(気分・時間帯・部屋の広さ・好みのノート)に答えると、適した香りと焚き方動画リンクを提案。購入率は非利用ユーザーの2.3倍になりました。
- 試香日誌アーカイブ 高解像度スキャンを縦スクロールで表示し、該当原料をクリックすると現代版商品がポップアップ。ユーザーは物語から商品へスムーズに移行できます。
- 多言語対応 日本語・英語・スペイン語・フランス語・中国語に翻訳。特にスペイン語圏からの流入が公開90日で7倍に増加しました。
キーワード戦略
主軸は「京都 お香 通販」「インセンス 瞑想 日本」。関連語として「沈香 スティック」「香木 ギフト 海外発送」を設定。GoogleのPeople Also Askから77件を抽出し、Q&Aを体験談形式で構成しました。公開60日で主軸5語すべてが検索3位以内に入り、自然検索流入は月間1,100→7,400セッションに伸びました。
コンテンツ運用──香りのライブとブログの連動
毎月第二日曜日にYouTube Live「香司と朝の坐禅」を配信し、焚きながら銘柄の由来を解説。チャットで寄せられた質問を翌週ブログ記事で掘り下げ、記事末で次回ライブを告知する循環導線を構築しました。ライブ視聴者の36%が30日以内にサイトで購入し、うち半数が3ヵ月以内にリピートしています。
さらにInstagramでは「#煙のゆらぎ一秒動画」として香の立ち上る瞬間を1秒クリップで毎朝投稿。アルゴリズムと相性が良くリール再生数は平均2.1万回、ECへの遷移率は3.4%と動画投稿の中で最高値を記録しました。
結果──公開100日で売上2.9倍、海外比率34%
- 自然検索流入 月間1,100→7,400セッション
- オンライン売上 月商280万円→810万円
- 海外比率 8%→34%
- 平均客単価 3,200円→4,700円
- メルマガ登録者 450→2,150
黒川さんは「香りは目に見えないからこそ、背景を語ることが大切だったと痛感した」と語ります。米ニューヨークの現代アートギャラリーでポップアップイベントが決まり、今秋にはロンドンの百貨店リバティで常設取り扱いが決定しました。
データが示す三つの洞察
- 一次資料の力
試香日誌アーカイブ閲覧ユーザーの平均滞在時間は8分52秒で、非閲覧層の2.8倍。商品ページへの遷移率は61%でした。 - 香調シミュレーターの効果
シミュレーター経由の購入者は客単価が5,900円と全体平均の1.26倍。選択肢を介して自己投影が進むと単価が上がる傾向が確認できました。 - ライブ×ブログの相乗効果
ブログにライブ動画のタイムスタンプリンクを埋め込んだことで、新規読者の約27%が過去ライブを視聴。結果として再生回数はアーカイブ公開30日後でも伸び続け、長期的なリード源になっています。
教訓──無形商材こそ物語で可視化
お香は姿形が小さく価格も数千円ですが、背後にある歴史や精神性にこそ価値があります。AI時代の今、一次情報と職人の肉声は差別化の最大要因です。Helpful Content Update後のGoogleは独自体験を伴う記事を高く評価しており、香りのレシピや失敗談まで赤裸々に書くほど検索順位が上がりました。
まとめ──あなたの工房にも眠る香りの物語
京都には公開されていない古文書や試作帳がまだ無数にあります。「歴史はあるが発信の方法がわからない」という伝統企業こそ、ストーリーテリングとデジタルUXを組み合わせることで飛躍できます。オフィスピコッツはヒアリングからサイト運用改善まで伴走し、検索で見つかり心に届くサイトを実現します。まずは無料相談で、鉱山のように眠る御社の物語をお聞かせください。

あなたのビジネスにも、語るべき物語があります
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