【AI社員実践記 第8話】「残っていないはず」のメールが5,954件 AIと確認しながら自社メール基盤を移行してみた

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こんにちは、オフィスピコッツの小笹です。

今回の「AI社員実践記」は、自社のメール環境をAIと一緒に見直した話です。

きっかけは、オフィスピコッツで公開した「Gmailの他社アドレス送信が2027年1月に終了する」という記事でした。

そこで移行方法としておすすめしているのが、会社のドメインをGoogle Workspaceへ正規に登録し、Gmailで直接送受信する方法です。

お客様におすすめしている以上、自社の環境も同じように整理しておこう。

そう考えて、20年以上前から使っている旧ドメインのメール環境をGoogle Workspaceへ移行することにしました。

ところが今回、一番印象に残ったのは移行作業そのものではありません。

AIと一緒に作業前の点検をしたことで、「動いているから問題ない」と思っていたメール環境の中から、思わぬ状態が見つかりました。

「残っていないはず」のメールが5,954件

旧ドメイン宛てのメールは、長年、

レンタルサーバーで受信 → 現在使っているメールアドレスへ転送

という構成で動かしていました。

転送設定は「サーバーにメールを残さない」。

そのため、旧サーバーのメールボックスには、ほとんど何も残っていないつもりでした。

今回、メール環境を停止する前の段取りをAIと整理していたところ、

「削除する前に、メールボックスへ過去メールが残っていないか確認しておいた方がいい」

という確認事項が出ました。

念のため管理画面を開いてみると、

5,954件。

旧メールサーバーのメールアドレス一覧

もう一つの旧アドレスにも2,115件ありました。

合計すると、8,000通を超えています。

「サーバーに残さない」設定なのに、なぜこんなに残っているのか。

ここから今回の調査が始まりました。

中身は、ほぼ全部「配送できませんでした」

Webメーラーを開くと、受信箱には同じような件名がずらりと並んでいました。

Undelivered Mail Returned to Sender

配送失敗の通知です。

Webメーラーの受信箱

大切なメールが5,954件残っていたわけではありません。

では、なぜ配送失敗通知ばかりが大量に残っていたのか。

1通のエラーレポートをAIに見せ、内容を一緒に読み解きました。

AIの整理では、今回起きていたことは次のような流れでした。

  1. 旧ドメイン宛てに迷惑メールが大量に届く
  2. レンタルサーバーが、それらも現在のメールアドレスへ転送する
  3. Gmail側で転送経路からのメールが一時的に受信制限される
  4. 転送に失敗した通知だけが旧サーバーへ戻ってくる
  5. その通知が削除されず蓄積していく

つまり、5,954件の正体は、転送に失敗し続けた記録でした。

これら自体は、保存しておく必要のあるメールではありません。

ただし、問題はその一歩手前です。

「届いているから大丈夫」ではなかった

今回の旧メール環境では、迷惑メールも含めて機械的に転送していました。

その結果、転送経路そのものがGmail側で制限される状態が起きていました。

同じ転送経路には、当然、本物のお問い合わせメールも通ります。

つまり、

普段はメールが届いているように見えていても、条件によっては本当に必要なメールまで遅れたり、届きにくくなったりする可能性がある。

そんな状態だったわけです。

メールはホームページと違って、外から状態がほとんど見えません。

「送れる」「受け取れる」。

それだけで、つい正常だと思ってしまいます。

弊社自身も、今回Google Workspaceへの移行を計画しなければ、この状態に気づくのはもっと先になっていたと思います。

メールを消すのではなく、転送そのものをやめる

5,954件の配送失敗通知を削除しても、原因は解決しません。

そこで今回、

旧サーバーで受信して転送する構成そのものを終了し、旧ドメインをGoogle Workspaceへ正規登録する

方針にしました。

メールはGoogleが直接受信します。

これなら、途中に旧レンタルサーバーの転送を挟む必要がありません。

ここから実際の移行作業に入ります。

今回も、AIに画面を見せながら一手ずつ進めた

今回の作業では、複数の管理画面を行き来しました。

  • ドメイン管理
  • DNS
  • Google Workspace
  • Gmail
  • 旧レンタルサーバー

作業内容としては、

  • ドメインの設定確認
  • ネームサーバー変更
  • Google Workspaceへのドメイン追加
  • 所有権の証明
  • MX設定
  • SPF設定
  • DKIM設定
  • 旧設定の整理
  • 最後の送受信テスト

と続きます。

こうして並べると、少し構えてしまう作業です。

そこで今回も、これまでのAI社員実践記と同じように、

「今表示されている画面をAIに見せて、次に何をするか確認する」

という進め方をしました。

全部の設定を最初からAIに任せるわけではありません。

画面を開く。

スクリーンショットを見せる。

AIがその画面の意味と選択肢を整理する。

こちらが判断して操作する。

その繰り返しです。

選ぶ前に「この2つは何が違う?」を聞ける

たとえば、Google Workspaceへ旧ドメインを追加するとき、画面には2つの選択肢が表示されました。

  • セカンダリ ドメイン
  • ユーザー エイリアス ドメイン
Google Workspaceのドメイン追加画面

管理画面には説明も書かれています。

それでも、自分が今回やりたいことに対してどちらを選ぶのかは、少し迷います。

そこで操作する前に画面をAIへ見せると、

「この選択肢はこういう場合に使うもの」

「今回やりたいのはこちら」

という形で整理できます。

今回、AIが役に立ったのは、ボタンを押してくれることではありません。

押す前に、そのボタンが何を意味しているのかを一緒に確認できたことです。

これは実際の設定作業ではかなり助かります。

「聞いていないところ」も見つける

もう一つ便利だったのが、画面全体を見せられることでした。

ある設定を確認するためにGmailの画面を見せると、本来聞いていた部分とは別に、以前のメール構成で使っていた設定が残っていることをAIが指摘しました。

今回、新しい送信認証を整える以上、古い構成の設定が残ったままなのは避けたい。

こちらとしては「今やっている作業」だけを見ています。

AIは画面全体を見て、

「ここにも古いものが残っています」

と指摘する。

人間2人で設定画面を確認しているような感覚に近いかもしれません。

判断と操作は人間。

AIは、表示されているものの意味を整理し、見落とし候補を言葉にする。

今回のメール移行では、この役割がかなり合っていました。

約30分で移行完了

実際の移行作業は、およそ30分で完了しました。

ネームサーバー、Google Workspaceへのドメイン追加、受信設定、送信認証まで一通り終わりました。

最後に、スマートフォンから旧ドメイン宛てへテストメールを送ります。

送信時刻は14時02分。

12秒後、Gmailへ直接届きました。

テストメールの認証結果

認証結果を見ると、

  • SPF:PASS
  • DKIM:PASS
  • DMARC:PASS

です。

旧レンタルサーバーを経由して転送する構成ではなく、Googleが直接受信する形になりました。

20年以上使ってきた旧ドメインですが、メールの受け方はこの日、大きく変わりました。

AI社員がやったのは「移行作業」ではなかった

今回の作業を振り返ると、AIが直接設定を変更したわけではありません。

DNSを書き換えたのも、Google Workspaceへドメインを追加したのも、古い設定を削除したのも人間です。

それでも、「AI社員実践記」として取り上げたいと思った理由があります。

今回AIがやったのは、

作業そのものではなく、作業の前後にある「確認」と「判断材料の整理」だったからです。

  • 作業前に、残っているメールを確認するよう促す
  • 5,954件の配送失敗通知の意味を読み解く
  • 管理画面の選択肢を比較する
  • 次に確認すべき設定を整理する
  • 画面に残った古い設定を見つける
  • 最後に認証結果を確認する

こういう仕事は、一つひとつは小さいです。

でも、実際のIT作業では、この小さな確認の積み重ねがかなり重要です。

今回のような使い方なら、AI社員は「全部自動でやってくれる人」というより、

隣で画面を見ながら確認してくれる、もう一人の担当者

に近いのかもしれません。

古いメール構成は「動いているから大丈夫」とは限らない

今回の弊社のように、

  • 昔取得したドメインを使い続けている
  • レンタルサーバーからGmailへ転送している
  • Gmailから会社アドレスとして送信している
  • サーバーや管理会社を何度か変更している
  • 以前の設定を誰が行ったのか分からない

という会社は、決して珍しくありません。

しかもメールは、普段動いていれば見直す機会がほとんどありません。

一方で、迷惑メール対策やメール認証の仕組みは変わり続けています。

さらに2027年1月には、無料版Gmailで他社メールアドレスを送信元として使う機能の終了も予定されています。

今まで動いていた構成が、そのままずっと最適とは限りません。

今回、自社で実際に移行してみて、改めてそう感じました。

→ Gmailの他社アドレス送信が2027年1月終了|確認と対処

「うちのメール、どうなっている?」から確認できます

オフィスピコッツでは、Google Workspaceへの移行だけでなく、

そもそも今、会社メールがどういう経路で動いているのか分からない

という段階から確認しています。

今回弊社で行ったように、

現在の受信経路、転送設定、DNS、送信認証、古い設定などを整理し、

残すもの、変更するもの、止めるものを確認していきます。

メールが届かなくなってから直すのではなく、

まだ動いているうちに一度確認しておく。

今回の5,954件は、その大切さを自社で実感する出来事になりました。

→ メールまわりの見直し・Google Workspace移行のご相談

AI社員実践記は、まだ続きます。

この記事の監修小笹 通典(オフィスピコッツ株式会社 代表取締役)
京都産業21 登録専門家(No.46)/滋賀県DX協創パートナー/デジタル庁 デジタル推進委員。2002年開業、創業25年目。京都・滋賀を中心に1万件超のWeb活用・制作に携わる。 会社概要を見る