10年続けた「議事録の手作業更新」を、AIとの分業に変えた話|中小企業のAI業務活用の実例

前回の記事「AI社員と回す小さな会社の1日」では、弊社の1日の流れをご紹介しました。今回は、その中の一つの仕事を深掘りします。10年以上、手作業で続けてきた「議事録のホームページ掲載」を、AIとの分業に変えた話です。

派手な話ではありません。ですが、長く続いている会社ほど、こういう「昔からのやり方のまま残っている仕事」を必ず抱えているはずです。同じような仕事に心当たりのある方に読んでいただければと思います。

毎回1〜2時間かかっていた仕事

弊社では、ある団体様の会員向けページを長年管理しています。定例会議のたびに、事務局から議事録のWord資料が届き、それをホームページ用のデータ(HTML)に作り替えて掲載する——この仕事を10年以上続けてきました。

Wordの議事録には、番号付きの議題、日時や会場の細かい字下げ、担当者名の右寄せなど、独特の書式がたくさんあります。これをホームページ側の決まった形に、崩れないように移し替える。単純に見えて、実は神経を使う作業です。毎回1〜2時間、時には行のズレを直すだけで30分、ということもありました。

「Wordを渡すと、掲載データが返ってくる」に変わった

今回、この作業をAIに任せてみました。といっても「議事録をHTMLにして」と一言頼んだだけでは、使いものになりません。実際にやったのは、次のような手順です。

1. まず1回分を、人間が仕上げて「見本」にする

最初の1回は、これまで通り自分の手で仕上げました。この完成品が「正解の見本」になります。

2. AIに、Wordと見本の両方を渡して仕組みを作らせる

「このWordから、この完成品と同じものを作る手順を組んで」と依頼しました。AIはWordの中身(番号の付き方、字下げの深さ、担当者名の位置)を読み取って、自動で変換する仕組みを作ります。

3. 出てきたものを、人間の完成品と突き合わせる

ここが一番大事な工程でした。最初の変換結果は、9割は合っていましたが、細かいズレがいくつもありました。議題の数が3つ多い(本文の中の小さな番号リストを、議題と勘違いした)。担当者の名前欄に、本文の一部が紛れ込む。逆に、担当者欄に入れるべきでない注意書きが入ってしまう。

一つずつ「ここが違う。正しくはこう」と伝えると、AIは間違いの原因を特定して仕組みを直します。このやり取りを3往復ほど繰り返した結果、人間の完成品と同じ項目数・同じ配置のデータが出てくるようになりました

4. 次回からは「Wordを渡すだけ」

仕組みが一度できてしまえば、次の会議からは資料を渡すだけです。1〜2時間かかっていた作業が、確認込みで15分ほどになる見込みです。

それでも人間が手放さない工程

前回の記事でも書きましたが、弊社は「任せる業務」と「任せない業務」の線引きを一番大事にしています。この仕事でも、次の2つは人間の仕事のまま残しています。

掲載前の突き合わせ確認。 AIの変換は速くて正確ですが、会議のたびに資料の書き方は少しずつ変わります。想定外の書式が来れば、間違えます。公開ボタンを押す前に、元のWordと画面を見比べる数分は、これからも省きません。

お客様の情報の扱い。 会員向けページには、外に出せない情報が含まれます。何をAIに渡してよいか、どこまでを渡すかの判断は、仕組みではなく人間が毎回行います。

気づいたこと:AIは「教えると育つ」

今回いちばんの発見は、AIの間違いを直すやり取りが、そのまま「仕事のルール作り」になったことです。

「担当者の欄には人の名前だけ。『〜を依頼』のような文章は本文側に」——こうした修正を伝えるたび、それがルールとして残り、次からは間違えなくなります。人に仕事を引き継ぐときの「言葉にしにくいコツ」を、一つずつ言葉にしていく作業に近いものでした。

10年続けた仕事のコツが自分の頭の中にしかない、という状態は、実は会社にとって小さくないリスクです。AIに教える過程で、そのコツが形に残ったことは、時間短縮と同じくらい価値があったと感じています。

あなたの会社の「10年続けている手作業」は何ですか

毎月の請求書づくり、定型の報告書、決まった形式への転記——長く続いている会社ほど、「慣れているから気にならないが、実は時間を食っている仕事」があるものです。

そうした仕事のどれがAIに任せられて、どれが人間に残すべきものか。その見極めからお手伝いする「AI業務診断」を行っています。今回ご紹介した仕組みづくりも、同じ考え方で設計したものです。

「AIで崩れたホームページの復旧」のご相談も増えています。お困りの方はAIレスキューをご覧ください。