デジタル化が進む現代において、中小企業がオンラインでの存在感を示すことはますます重要になっています。特に、ホームページは顧客との接点を持つための基本的なツールとして位置付けられています。しかし、日本における中小企業のホームページ開設率は、依然として50%前後にとどまっています。ここでは、中小企業のホームページ開設率の現状、業種や地域による違い、開設しない理由、さらには今後の展望について詳しく解説します。これにより、中小企業がデジタル時代に適応し、競争力を高めるためのヒントを提供します。
もくじ
中小企業のホームページ開設率の現状
中小企業のホームページ開設率は、企業規模や調査方法によって異なる結果が出ていますが、おおよそ50%前後であると考えられます。
独自調査による結果
アイ・モバイル株式会社が2021年に実施した調査によると、中小企業のホームページ開設率は47.7%でした。この調査は3,500名の経営者を対象に行われ、回答者の約6割が従業員5名以下の企業であったため、小規模事業者の実態をよく反映していると考えられます。
同様に、ASX株式会社の独自調査でも、企業規模が小さい場合のホームページ保有率は5割前後、業界によっては1~3割程度という結果が出ています。
業種や企業規模による差異
ホームページの開設率は業種や企業規模によって大きく異なります。アイ・モバイル株式会社の調査では、業種別の開設率が以下のように報告されています。
- 情報通信業: 76%
- 教育、学習支援サービス業: 72%
- 飲食・宿泊業、医療業、介護福祉業、生活関連サービス業: 60%以上
- 卸売業、建設業、不動産業、物品賃貸業: 20~30%台
この結果から、情報通信業や教育関連業種ではホームページの開設率が高く、卸売業や建設業などでは比較的低いことがわかります。
大企業と中小企業の開設率の差
大企業と中小企業のホームページ開設率には大きな差があります。
大企業の開設率
総務省が2021年に実施した「通信利用動向調査」によると、従業員100人以上の企業では90.4%がホームページを開設しています。この調査では、従業員規模が大きくなるほどホームページの開設率が高くなる傾向が見られました。
中小企業の開設率との比較
一方、中小企業、特に小規模事業者のホームページ開設率は大企業に比べて低くなっています。前述のアイ・モバイル株式会社の調査結果(47.7%)と比較すると、大企業と中小企業の間には約40%ポイントもの差があることがわかります。
ホームページ開設率の推移
ホームページ開設率は年々上昇傾向にありますが、その速度は企業規模によって異なります。
全体的な推移
総務省の「平成27年版 情報通信白書」によると、2000年代に入ってからホームページの開設率は急速に上昇しました。2001年には77.7%、2005年には85.6%の企業がホームページを開設していました。ただし、この調査は主に大企業を対象としたものであり、中小企業の実態とは異なる点に注意が必要です。
中小企業における推移
中小企業のホームページ開設率の推移については、詳細なデータが少ないのが現状です。しかし、2015年の中小企業白書によると、当時の中小企業のホームページ保有率は60%を超えていたとされています。この数字と最近の調査結果を比較すると、中小企業のホームページ開設率は近年やや停滞している可能性があります。
ホームページを開設しない理由
中小企業がホームページを開設しない理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 固定の顧客・取引先しかいない(23%)
- 費用面での懸念
- 管理・更新への不安
- 時間的・資金的余裕がない
- SNSでの運用で十分と考えている
- 法人向けビジネスだから必要ないと考えている
特に小規模事業者では、ホームページの必要性を感じていない、あるいは運用に必要なリソースが不足していることが開設率の低さにつながっていると考えられます。
ホームページ開設のメリット
中小企業がホームページを開設することには、以下のようなメリットがあります。
- 24時間365日の情報発信が可能
- 地理的制約なく全国・全世界に情報を届けられる
- 多様な形式(テキスト、画像、動画)で情報を掲載できる
- 最新情報をリアルタイムで発信できる
- 企業の信頼性向上につながる
- 新規顧客の獲得や販路拡大の機会が増える
これらのメリットを考慮すると、中小企業にとってもホームページの開設は重要な経営戦略の一つと言えます。
ホームページ制作の動向
ホームページ制作に関する最近の動向として、以下のような傾向が見られます。
- 制作予算の増加:2015年から2018年にかけて、ホームページ制作の平均予算が73万円から142万円に増加。
- 品質重視の傾向:価格よりも品質や企画・提案力を重視する発注者が増加。
- スマートフォン対応の需要増:スマートフォン向けのデザイン対応が必須に。
- CMS(コンテンツ管理システム)の導入増加:WordPressなどのCMSを利用したサイト構築が主流に。
- 自社更新ニーズの高まり:更新・メンテナンスを自社で行う企業が増加。
これらの動向は、中小企業のホームページ開設にも影響を与えています。特に、CMSの普及により自社での更新が容易になったことは、中小企業にとってホームページ運用のハードルを下げる要因となっています。
業界別のホームページ開設状況
業界によってホームページの開設率や活用方法に違いが見られます。
情報通信業
情報通信業は最もホームページ開設率が高い業種の一つです。技術的な知識や経験が豊富なため、自社でホームページを構築・運用することが比較的容易であることが要因と考えられます。
飲食・宿泊業
飲食店や宿泊施設では、集客や予約受付のためにホームページを活用するケースが多く見られます。特に観光地では、外国人観光客向けの多言語対応サイトの需要も高まっています。
製造業
製造業では、製品カタログや技術情報の掲載、取引先とのコミュニケーションツールとしてホームページを活用する企業が多いです。ただし、BtoB企業の中には、ホームページの必要性を感じていない企業も一定数存在します。
小売業
小売業では、実店舗の情報発信やECサイトとしてホームページを活用するケースが増えています。特に近年は、オムニチャネル戦略の一環としてホームページの重要性が高まっています。
建設業・不動産業
建設業や不動産業では、施工事例や物件情報の掲載にホームページを活用する企業が多いですが、開設率は他業種に比べて低い傾向にあります。
地域別のホームページ開設状況
ホームページの開設率には地域差も見られます。
都市部と地方の差
一般的に、都市部の中小企業の方が地方の中小企業よりもホームページ開設率が高い傾向にあります。これは、都市部の方がIT人材の確保が容易であることや、競争が激しいためオンラインでの存在感を示す必要性が高いことなどが要因として考えられます。
東北地方の状況
東北地方の企業のホームページ開設率は全国平均を下回っているという調査結果があります。具体的には、東北地方の企業ホームページ開設率は79.1%で、全国平均を下回っています。この背景には、地域経済の状況やIT人材の不足などが影響していると考えられます。
ホームページ開設率向上のための取り組み
中小企業のホームページ開設率を向上させるために、様々な取り組みが行われています。
行政の支援策
多くの自治体や商工会議所では、中小企業向けのホームページ作成支援事業を実施しています。これには、セミナーの開催、専門家の派遣、制作費用の補助などが含まれます。
IT企業の取り組み
IT企業やWeb制作会社の中には、中小企業向けの低価格ホームページ制作サービスや、テンプレートを使用した簡易制作サービスを提供しているところもあります。これらのサービスにより、初期投資を抑えてホームページを開設できるようになっています。
教育・人材育成
中小企業の経営者や従業員向けに、ホームページ作成やWebマーケティングに関する教育プログラムを提供する動きも増えています。これにより、自社でホームページを制作・運用できる人材を育成し、開設率の向上につなげることが期待されています。
今後の展望
中小企業のホームページ開設率は、今後も緩やかに上昇していくと予想されます。その要因として以下のようなことが考えられます。
- デジタル化の進展:社会全体のデジタル化が進む中で、オンラインでの情報発信の重要性が高まっています。
- 低コスト化:ホームページ制作ツールの進化により、比較的低コストでの開設が可能になっています。
- 若手経営者の増加:デジタルネイティブ世代の経営者が増えることで、ホームページの必要性への理解が深まると考えられます。
- コロナ禍の影響:新型コロナウイルスの影響で、非対面でのビジネス展開の重要性が高まっています。
- 行政の後押し:デジタル化推進の流れの中で、中小企業のホームページ開設を後押しする政策が増えると予想されます。
ただし、ホームページの開設率が100%に近づくことは考えにくく、業種や企業規模によっては、SNSの活用やオフラインでのビジネス展開を重視する企業も一定数存在し続けると思われます。
結論
中小企業のホームページ開設率は現在50%前後であり、大企業と比べるとまだ低い水準にあります。しかし、デジタル化の進展やコロナ禍の影響などにより、ホームページの重要性は今後さらに高まっていくと予想されます。
ホームページは、中小企業にとって新たな顧客獲得や販路拡大の機会を提供する重要なツールとなり得ます。一方で、制作・運用にかかるコストや人材の問題、必要性の認識不足などが、開設率向上の障壁となっています。
これらの課題を解決し、中小企業のホームページ開設率を向上させていくためには、行政の支援策の充実、IT企業による低コストサービスの提供、経営者や従業員向けの教育プログラムの拡充などが重要になってくるでしょう。
また、単にホームページを開設するだけでなく、効果的に活用していくことも重要です。ホームページを通じた情報発信、顧客とのコミュニケーション、オンライン販売など、各企業の特性や目的に合わせた活用方法を模索していく必要があります。
中小企業のホームページ開設率の向上は、日本経済のデジタル化推進や競争力強化にもつながる重要な課題です。今後、官民一体となった取り組みにより、より多くの中小企業がデジタルの恩恵を受けられるようになることが期待されます。
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