ホームページ制作者が抱える「悩み」の共通パターンと改善ステップ

ホームページ制作者として、クライアントのビジネスに貢献できるこの仕事に、誇りとやりがいを感じている方は多いでしょう。しかしその一方で、技術の急速な進化、クライアントとの複雑なコミュニケーション、そして常に成果を求められるプレッシャーの中で、尽きない悩みを抱えているのもまた事実ではないでしょうか。

「クライアントの要望が曖昧で、何度も手戻りが発生してしまう…」
「最新技術を学ぶ時間がないまま、時代に取り残されそうで怖い…」
「SEOで成果を出せず、申し訳ない気持ちでいっぱいだ…」
「適正な制作料金がわからず、つい安請け合いして疲弊してしまう…」

この記事は、そんな実直で熱心なホームページ制作者であるあなたのために書きました。一般論を避け、制作者が現場で直面するであろう具体的な「悩み」を7つの共通パターンに分類し、明日から実践できる改善ステップを詳しく解説します。

この記事を最後まで読めば、目の前の課題を乗り越えるヒントが見つかるだけでなく、自身の市場価値を高め、クライアントから「あなたに頼んでよかった」と心から感謝される「事業パートナー」へと進化するための道筋が見えてくるはずです。

【スキル・キャリア別】ホームページ制作者が直面する7つの悩みと改善ステップ

ホームページ制作者が抱える悩みは、その人の経験やスキルセット、働き方によって様々です。ここでは、多くの制作者が一度は通るであろう代表的な7つの悩みをパターン別に分類し、具体的な改善ステップと事例を交えながら深掘りしていきます。

【デザインの壁】悩み1: クライアントの曖昧な要望を形にできない

「もっとこう、シュッとした感じで」「全体的にいい感じにしてほしい」「ターゲットは女性なので、とにかくオシャレに」…こうした抽象的な要望に、頭を抱えた経験はありませんか?良かれと思ってデザインを提案しても、「うーん、ちょっとイメージと違うんだよなあ」というフィードバックが戻ってくる。この無限ループは、制作者の精神を最も消耗させる悩みの一つです。

課題の核心は、クライアントが持つ頭の中のイメージと、制作者のデザインとの間に生じる「認識のズレ」にあります。クライアントはデザインの専門家ではないため、イメージを言語化するのが苦手なのは当然です。このズレを放置したまま制作を進めると、手戻りが多発し、スケジュール遅延やモチベーション低下の大きな原因となります。

改善ステップ

  1. 「なぜ?」を5回繰り返し、真の目的を探る
    「オシャレにしたい」という要望の裏には、「競合のA社より洗練されたイメージを持たれたい」「客単価を上げたいので高級感を出したい」「20代の新規顧客を獲得したい」といったビジネス上の目的が必ず隠されています。ヒアリングの際に「なぜオシャレにしたいのですか?」と問いかけ、その答えにさらに「それはなぜですか?」と繰り返すことで、表面的な要望の奥にある本質的な課題を掘り下げることができます。真の目的を共有することが、デザインの方向性を定める羅針盤となります。
  2. 徹底的にビジュアルで認識を合わせる
    言葉だけでデザインのイメージを共有するには限界があります。そこで有効なのが、参考サイトを複数提示し、クライアントに「好き・嫌い」とその理由を直感的に選んでもらう方法です。
    • 「このサイトのどの部分が好きですか?(例:色使い、写真の雰囲気、余白の取り方)」
    • 「逆に、このサイトのどの部分は好みではありませんか?」
      と質問を重ねることで、クライアントの好みの傾向を正確に把握できます。デザインツール(Figmaなど)上で、参考サイトの好きな部分・嫌いな部分のスクリーンショットを並べてコメントを書き込んでいく「ムードボード」を共同で作成するのも非常に効果的です。
  3. ワイヤーフレームで「情報設計」の合意を先に行う
    いきなりデザイン(装飾)の話に入るのではなく、まずはワイヤーフレーム(サイトの設計図)を用いて、「どこに」「どんな情報を」「どんな順番で」配置するかという情報設計の合意形成を最優先させましょう。この段階で、「このボタンは本当に必要か」「この情報の優先順位はもっと高いのではないか」といった議論を尽くすことで、後のデザイン工程での大きな手戻りを防ぐことができます。「デザインはあくまで情報設計という骨格に服を着せる作業である」という認識をクライアントと共有することが重要です。

【事例】「お洒落な感じ」の裏にあった真の目的

ある地方都市のカフェからリニューアルの依頼を受けた制作者。当初の要望は「とにかくインスタ映えするお洒落なサイト」という漠然としたものでした。制作者はヒアリングを重ね、「なぜインスタ映えが必要なのか?」を深掘りしました。すると、「新規の若い女性客を増やしたいが、店の場所が分かりづらく、目的来店してもらえない」という真の課題が見えてきました。

そこで彼は、単に見た目がお洒落なだけでなく、「店舗へのアクセス情報」と「看板メニューの魅力」をトップページで徹底的に分かりやすく伝える情報設計をワイヤーフレームで提案。デザインも、流行りのものではなく、ターゲット層が好む雑誌のような落ち着いたトーンをムードボードで確認しながら制作しました。結果、サイト経由での新規来店客が前年比150%に増加。「お洒落なだけじゃなく、ちゃんとお客様を呼んでくれるサイトになった」と、クライアントから絶大な信頼を得ることができました。

【技術の壁】悩み2: 技術の進化が速すぎてキャッチアップできない

JavaScriptのフレームワーク、ヘッドレスCMS、Jamstack、Web3、そしてAI…Web制作を取り巻く技術は、まさに日進月歩ならぬ「秒進分歩」で進化しています。「新しい技術を学ばなければ」という焦りと、日々の業務に追われて学習時間が確保できないという現実の板挟みになり、無力感を覚えてしまう制作者は少なくありません。

課題の核心は、全ての技術を完璧に追いかけようとすることによる「学習コストの肥大化」です。闇雲に新しい技術に手を出すのではなく、自分自身のキャリアプランと照らし合わせ、学ぶべき技術を戦略的に「選択と集中」することが求められます。

改善ステップ

  1. 「コアスキル」と「トレンドスキル」に分けて考える
    自身のスキルを、「コアスキル(HTML/CSS/JavaScriptの基礎、PHP、WordPressなど、現在の仕事の根幹をなす技術)」と「トレンドスキル(React/Vue、ヘッドレスCMS、AI活用など、将来的に価値が高まりそうな技術)」に分類してみましょう。日々の業務ではコアスキルを磨きつつ、学習時間の1〜2割をトレンドスキルのキャッチアップに充てるなど、意識的にリソースを配分することが重要です。全てのトレンドを追う必要はありません。自分が「面白い」「今後の仕事に活かせそう」と感じる分野を1つか2つに絞り、深く掘り下げる方が結果的に専門性につながります。
  2. インプットとアウトプットをセットで行う
    技術ブログを読んだり、動画教材を見たりするだけのインプット学習だけでは、スキルは定着しません。学んだ技術を使って、小さなものでも良いので必ず何かをアウトプットする習慣をつけましょう。
    • 簡単なポートフォリオサイトを新しいフレームワークで作り直してみる。
    • 学んだことを自分のブログやQiitaで記事にする。
    • 勉強会でLT(ライトニングトーク)をしてみる。
      アウトプットすることで知識が整理され、どこでつまずいたのかが明確になり、より深い理解につながります。
  3. 信頼できる情報源を絞り、効率的に収集する
    情報の海に溺れないために、インプット元を厳選しましょう。RSSリーダー(Feedlyなど)を活用して、国内外の信頼できる技術ブログやニュースサイトを数個に絞って巡回する、X(旧Twitter)でフォローする技術系アカウントを厳選するなど、自分なりの情報収集フローを確立することが大切です。これにより、短時間で質の高い情報を効率的にキャッチアップできます。

【事例】WordPress一筋だった制作者の新たな挑戦

長年WordPress案件をメインに手掛けてきたフリーランスのAさん。表示速度やセキュリティの観点から、JamstackやヘッドレスCMSに興味を持ち始めましたが、何から手をつければいいか分からずにいました。そこで彼は、まず自分のポートフォリオサイトをNext.jsとmicroCMSを使ってリニューアルすることを決意。業務時間外に少しずつ学習を進め、3ヶ月かけてサイトを公開しました。制作過程をブログ記事として発信したところ、それを見たスタートアップ企業から「表示速度の速いサイトを作ってほしい」と声がかかり、初めてのJamstack案件を獲得。WordPressという強力なコアスキルに加え、トレンドスキルを掛け合わせることで、自身のキャリアの幅を広げることに成功しました。

【マーケティングの壁】悩み3: SEOで成果を出せず、クライアントの期待に応えられない

「サイトを納品したのに、全く問い合わせが来ない」「狙ったキーワードで全然上位表示されない」…クライアントからこう言われ、肩身の狭い思いをした経験はないでしょうか。ホームページ制作者にとって、SEO(検索エンジン最適化)はもはや避けては通れない必須知識ですが、そのアルゴリズムは常に変動し、「これをやれば絶対」という正解がないため、多くの制作者が成果を出せずに悩んでいます。

課題の核心は、SEOを「納品後に行う特別な作業」と捉えている点にあります。本来、SEOはホームページの企画・設計段階から組み込まれるべきものであり、制作者が最も価値を発揮できる領域でもあります。

改善ステップ

  1. 制作段階で実装すべき「テクニカルSEO」を完璧にする
    コンテンツの中身以前に、Googleがサイトの情報を正しく認識できなければ、SEOの土俵にすら上がれません。以下の項目は、ホームページ制作者の責任範囲として、制作段階で必ず実装しましょう。
    • 適切なタイトルタグ、メタディスクリプションの設定
    • 見出しタグ(h1, h2, h3)の階層構造の最適化
    • 画像のalt属性の設定
    • 表示速度の高速化(画像圧縮、キャッシュ活用など)
    • モバイルフレンドリー対応
    • XMLサイトマップの生成・送信
    • 構造化データマークアップの実装
      これらをチェックリスト化し、納品前の必須項目とすることで、SEOの基礎固めができます。
  2. クライアントを巻き込み「コンテンツSEO」の重要性を説く
    テクニカルSEOが土台だとすれば、その上で評価されるのが「ユーザーにとって価値のあるコンテンツ」です。このコンテンツを生み出せるのは、その道のプロであるクライアント自身です。制作者の役割は、クライアントが持つ専門知識やノウハウを引き出し、それを検索ユーザーが求める形のコンテンツに落とし込む手助けをすることです。
    • キーワード調査ツール(Googleキーワードプランナーなど)で需要のあるキーワードを提示する。
    • 競合サイトのコンテンツを分析し、差別化のポイントを提案する。
    • ブログやお知らせ欄の更新方法をレクチャーし、クライアントが自走できるよう支援する。
      「SEOはクライアントとの共同作業である」という意識を持つことが、成果への近道です。
  3. 分析と改善のサイクルを提案する
    SEOは「やったら終わり」ではありません。納品後、GoogleアナリティクスGoogleサーチコンソールといったツールを使って効果測定を行い、改善を繰り返していく必要があります。保守契約の中に「月1回のアクセスレポート提出と改善提案」といったメニューを組み込むことで、クライアントとの継続的な関係を築くと同時に、成果に対して責任を持つ姿勢を示すことができます。

【事例】「作るだけ」から「育てる」パートナーへ

ある地域の工務店サイトを制作したBさん。納品後、「工務店 地域名」での検索順位が伸び悩み、クライアントの満足度も低い状態でした。Bさんは保守契約の範囲内で、サーチコンソールのデータを分析。「施工事例」ページの閲覧数が少ないこと、一方で「家づくりの流れ」といったコラム記事からの流入が少しずつ増えていることを発見しました。そこで、クライアントに「完成した家の写真だけでなく、お客様との打ち合わせ風景や職人さんのこだわりなど、家づくりの『過程』をもっとブログで発信しませんか?」と提案。クライアントもその提案に乗り、二人三脚でコンテンツ改善に着手。半年後、複数のロングテールキーワードで上位表示を達成し、サイト経由での資料請求数が月平均5件以上という成果を上げました。

【ビジネスの壁】悩み4: 適正価格がわからず、疲弊する

「この案件、見積もりを高く出しすぎて失注したらどうしよう…」「周りの制作者はもっと安くやっているかもしれない…」そんな不安から、つい自分のスキルを安売りしてしまい、長時間労働に見合わない報酬で疲弊していないでしょうか。特にフリーランスの制作者にとって、価格設定は永遠の課題です。

課題の核心は、制作料金を「作業時間」だけで計算してしまうことにあります。クライアントがホームページに支払う対価は、あなたの労働時間に対してではなく、ホームページが生み出す「価値」に対してです。この視点の転換が、価格設定の悩みを解決する鍵となります。

改善ステップ

  1. 「時間単価」と「プロジェクト単価」の両方で見積もる
    まずは、自分の作業工数を正確に把握するために、項目別の作業時間を洗い出しましょう(例:ヒアリング5時間、デザイン20時間、コーディング30時間…)。それに自分の時間単価を掛ければ、最低限必要な見積もり額(原価)が見えてきます。
    しかし、これだけで価格を決めてはいけません。次に、「このホームページがクライアントのビジネスにどれだけの価値(売上向上、コスト削減、ブランディング効果など)をもたらすか」という視点から、プロジェクト全体の価値を考えます。この「価値」を価格に上乗せすることで、単なる作業の対価ではない、付加価値型の見積もりが可能になります。
  2. 「松竹梅」の3段階で見積もりを提示する
    見積もりを1パターンしか提示しないと、クライアントは「高いか安いか」の二択でしか判断できません。そこで、機能やサポート内容が異なる3段階のプランを提示することをおすすめします。
    • 梅プラン(最低限の機能):予算を重視するクライアント向け
    • 竹プラン(標準的な機能+α):制作者として最も推奨するプラン
    • 松プラン(フル機能+手厚いサポート):将来的な発展を見据えた最上位プラン
      選択肢を提示することで、クライアントは自分のニーズに合ったものを選びやすくなり、価格交渉もスムーズに進みます。多くの場合、真ん中の「竹プラン」が選ばれる傾向にあります(ゴルディロックス効果)。
  3. 価格の「根拠」を言語化して説明する
    「なぜこの価格になるのか」を、専門用語を避けて分かりやすく説明する責任が制作者にはあります。単に「一式 〇〇円」と書くのではなく、「この価格には、競合サイトの徹底的な分析費用や、SEOで成果を出すための内部施策の実装費用が含まれています。これにより、将来的に〇〇円以上の広告費削減効果が見込めます」というように、価格と提供価値をセットで説明することで、クライアントの納得感は格段に高まります。

【事例】見積もり方法の変更で単価1.5倍アップ

フリーランス歴3年のCさんは、常に価格競争に巻き込まれ、疲弊していました。そこで、今まで「作業時間×時間単価」でしか計算していなかった見積もり方法を全面的に見直しました。クライアントへのヒアリングを徹底し、「サイトリニューアルによって、年間100万円の売上アップを目指す」という共通目標(KGI)を設定。その目標達成のために必要な施策(デザイン改善、SEO、ブログ機能実装など)を積み上げ、それぞれの施策がKGIにどう貢献するかを明記した提案書を作成しました。結果、以前よりも1.5倍高い見積もり額でしたが、「ここまで我々のビジネスを考えてくれた提案は初めてだ」とクライアントに高く評価され、無事に受注。価格競争から脱却する大きな一歩となりました。

【運用の壁】悩み5: 「作って終わり」にならず、継続的な関係を築けない

ウェブサイトは納品したら終わり、ではありません。むしろ公開してからが本当のスタートです。しかし、納品後にクライアントとの関係が途切れてしまい、単発の案件ばかりで収入が安定しない、という悩みを抱える制作者も多いでしょう。また、「ちょっとした修正」が頻繁に発生し、その都度見積もる手間や、サービスで対応することによる負担増も悩みの種です。

課題の核心は、制作の初期段階で「公開後の運用・保守」についての取り決めを明確にしていないことにあります。継続的な関係を築くためには、制作と運用をセットで捉え、クライアントにその重要性を理解してもらう必要があります。

改善ステップ

  1. 保守・運用プランを具体的に定義し、契約書に明記する
    「保守」と一言で言っても、その範囲は様々です。サーバー・ドメインの管理、CMSやプラグインのアップデート、定期的なバックアップといった「守りの保守」から、アクセス解析レポートの提出、コンテンツ改善提案といった「攻めの運用(グロースハック)」まで、どこまでを月額料金に含めるのかを明確に定義しましょう。
    • 対応範囲(例:テキスト修正は月5回まで、ページの追加は別途見積もり)
    • 対応時間(例:平日10時〜18時)
    • 連絡手段(例:メール、チャットツール)
      これらの内容をサービスレベルアグリーメント(SLA)として契約書に明記することで、後の「言った言わない」トラブルを防ぎます。
  2. クライアント自身が更新できる仕組み(CMS)とレクチャーを提供する
    お知らせやブログ、簡単なテキスト修正など、クライアント自身が更新できる部分は、積極的にCMS(WordPressなど)を導入し、クライアントが自走できる環境を整えましょう。納品時には、必ず更新方法のレクチャー会を実施し、分かりやすいマニュアルも用意します。これにより、制作者は軽微な更新作業から解放され、より専門性の高い「攻めの運用」に集中することができます。
  3. サイトの「健康診断レポート」を定期的に送る
    保守契約を結んでいるクライアントには、月に一度、サイトの健康状態を報告する習慣をつけましょう。
    • Googleアナリティクスに基づくアクセス状況のサマリー
    • サーチコンソールでの検索キーワードの動向
    • 表示速度やセキュリティのチェック結果
      レポートの最後には、「来月は〇〇というキーワードを狙ったブログ記事を書いてみませんか?」といった具体的な改善提案を添えることで、単なる保守業者ではなく、事業の成長を共に考えるパートナーとしての信頼を勝ち取ることができます。

【事例】保守契約からWebマーケティング顧問へ

ある士業事務所のサイトを制作したDさん。当初はサーバー管理のみの最低限の保守契約でした。Dさんは毎月、簡単なアクセスレポートに一言コメントを添えて送り続けました。3ヶ月が経った頃、「最近、〇〇という法律相談に関するページのアクセスが増えていますね」と報告。それをきっかけに、クライアントから「その分野に特化したコンテンツを強化したい」と相談を受け、Web広告の運用やセミナー集客ページの制作といった追加の提案につながりました。今では月額のWebマーケティング顧問として、クライアントの事業に深く関わっています。

【フリーランスの壁】悩み6: 孤独感と案件獲得の不安定さ

会社員から独立したフリーランスの制作者が直面しやすいのが、技術的な相談相手がいない孤独感と、収入の波が激しいことによる将来への不安です。一人で全ての業務をこなし、営業から制作、経理まで担当する中で、モチベーションを維持するのが難しくなったり、自分のスキルが市場で通用するのか不安になったりすることもあるでしょう。

課題の核心は、「個」で戦おうとしすぎることにあります。フリーランスは孤独な職業だと思われがちですが、実際には他の制作者や専門家と連携し、「チーム」として動くことで、より大きな価値を生み出し、安定したキャリアを築くことが可能です。

改善ステップ

  1. オンライン・オフラインのコミュニティに積極的に参加する
    同じ悩みや志を持つ制作者と繋がることは、孤独感を解消する何よりの特効薬です。X(旧Twitter)などのSNSで同業者と交流したり、技術系の勉強会やオンラインサロンに参加したりしてみましょう。そこでの出会いが、情報交換の場になるだけでなく、仕事を紹介し合える貴重なパートナーシップに発展することも少なくありません。「自分一人では対応できない大規模案件を、コミュニティの仲間とチームを組んで受注する」といった動きも活発です。
  2. ポートフォリオを「作品集」から「問題解決事例集」へと進化させる
    案件獲得の不安定さを解消するには、待ちの姿勢ではなく、攻めの営業が必要です。その最大の武器がポートフォリオサイトです。しかし、ただ制作実績を並べるだけでは不十分。「クライアントがどんな課題を抱えていたか」「その課題に対し、自分がどのような提案・制作を行い、どう解決したか」「その結果、どのような成果(売上〇%アップなど)が出たか」というストーリーを具体的に記述しましょう。これにより、あなたの制作スキルだけでなく、課題解決能力を効果的にアピールできます。
  3. 制作会社やエージェントとの協業も視野に入れる
    自分で営業活動をするのが苦手な場合は、制作会社やフリーランス専門のエージェントに登録し、外部の営業力を活用するのも賢い選択です。安定的に案件を紹介してもらえるだけでなく、自分一人では関われないような大規模プロジェクトに参加するチャンスも得られます。その際は、手数料だけでなく、担当者との相性や、紹介される案件の質、自身のキャリアプランとの整合性などを総合的に判断しましょう。

【事例】コミュニティ参加がキャリアの転機に

独立当初、単発のコーディング案件ばかりで収入が不安定だったEさん。思い切って参加したWeb制作者向けのオンラインサロンで、デザインが得意なFさん、マーケティングが得意なGさんと出会いました。意気投合した3人は、それぞれの強みを活かしてチームを結成。Eさんがコーディングとディレクション、Fさんがデザイン、GさんがSEOと広告運用を担当することで、企画・デザインから制作、集客までを一気通貫で提供できるようになり、高単価な案件を安定的に受注できるようになりました。

【AI時代の壁】悩み7: AIに仕事が奪われるのではないかという漠然とした不安

ChatGPTに代表される生成AIの急速な進化は、多くのホームページ制作者に「自分の仕事は将来AIに代替されてしまうのではないか」という大きな不安をもたらしています。簡単なコーディングやデザイン案の生成、文章作成などをAIが瞬時にこなす様子を目の当たりにし、自身の存在価値が揺らいでいる方もいるかもしれません。

課題の核心は、AIを「競合」や「脅威」として捉えてしまうことにあります。視点を変えれば、AIは制作者の能力を拡張し、生産性を飛躍的に向上させてくれる強力な「パートナー」になり得ます。AI時代に求められるのは、AIに代替されない人間ならではの価値を再定義し、AIを使いこなす能力です。

改善ステップ

  1. AIを「アシスタント」として積極的に活用し、生産性を上げる
    まずは、日々の業務の中でAIを積極的に使ってみましょう。AIは、単純作業や思考の壁打ち相手として非常に優秀です。
    • コーディング: 定型的なコードの生成、エラーのデバッグ
    • デザイン: キャッチコピーのアイデア出し、配色パターンの提案
    • コンテンツ作成: 見出し構成案の作成、文章のリライト
      これらの作業をAIに任せることで生まれた時間を、クライアントとのコミュニケーションや、より創造性の高い企画・提案業務といった、人間にしかできない付加価値の高い仕事に振り分けましょう。
  2. AIにはできない「課題発見力」と「共感力」を磨く
    AIは与えられた指示をこなすのは得意ですが、クライアントが本当に解決したい潜在的な課題を発見したり、その悩みや情熱に深く共感したりすることはできません。前述の「悩み1」で解説したような、対話を通じてクライアントのビジネスの根幹にある課題を掘り下げ、本質的な解決策を提案するコンサルティング能力こそ、これからの制作者に最も求められるスキルです。
  3. 複数のスキルを掛け合わせ、独自の専門性を築く
    「デザインだけ」「コーディングだけ」といった単一のスキルは、将来的にAIに代替されるリスクが高いかもしれません。しかし、「デザイン × SEO × ライティング」や「コーディング × 映像制作 × マーケティング」のように、複数のスキルを掛け合わせることで、AIには真似できない独自のポジションを築くことができます。自分が情熱を注げる分野を見つけ、スキルを掛け合わせていくことで、あなただけのユニークな価値が生まれます。

【事例】AIを相棒にコンサルティング領域へ

Webサイトの文章作成に苦手意識を持っていたFさん。ChatGPTが登場して以降、クライアントからヒアリングした内容をもとに、まずはAIに文章のたたき台を作成させるようになりました。そのたたき台を元に、クライアントの想いやブランドの個性が伝わるように自分の言葉で修正・加筆していくスタイルを確立。コンテンツ作成の時間が大幅に短縮されたことで、クライアントのビジネスモデルそのものを分析し、Webサイトを核とした事業全体の改善提案を行うコンサルティング業務に時間を割けるようになり、結果的に単価も大幅にアップしました。

悩みの先へ:クライアントの「事業パートナー」になるために

ここまで7つの悩みと改善ステップを見てきました。これらの悩みに共通する解決の方向性は、ホームページ制作者が単なる「指示されたものを作る作業者」から、「クライアントのビジネス課題をWebの力で解決する事業パートナー」へと進化することです。

技術を磨くことはもちろん重要ですが、それ以上に、クライアントの事業を深く理解し、その成功のために何ができるかを考え、主体的に提案する姿勢が、これからの時代を生き抜くホームページ制作者には不可欠です。悩みを一つひとつ乗り越える過程は、まさに「事業パートナー」へと成長していくためのロードマップそのものなのです。

現役ホームページ制作者のためのQ&A

ここでは、より具体的な疑問にQ&A形式でお答えします。

Q1. クライアントからの急な仕様変更や追加要望に、どう対応すればスマートですか?

A1. まずは、初期の契約段階で「仕様変更や追加要望は別途見積もりとなる」ことを明確に伝え、契約書にも明記しておくことが大前提です。その上で要望を受けた際は、感情的にならず、「素晴らしいアイデアですね!その機能を追加した場合、工数が〇時間、費用が〇円追加となりますが、いかがなさいますか?」と、まずは工数と費用を冷静に提示しましょう。代替案として「今回のリリースでは見送り、次のフェーズで実装するというのはいかがでしょうか?」と提案するのも有効です。毅然とした態度と柔軟な提案を組み合わせることが重要です。

Q2. デザインのインプットは、どうやって効率的に行えばいいですか?

A2. 毎日時間を決めて、国内外の優れたWebサイトを集めたギャラリーサイト(SANKOU!、MUUUUU.ORG、Awwwardsなど)を眺める習慣をつけるのがおすすめです。その際、ただ「かっこいいな」で終わらせず、「なぜこのデザインは心地よいのか?」「このUIはどんな課題を解決しているのか?」といったデザインの意図を言語化するトレーニングをすると、引き出しの質が格段に上がります。Webデザインに限らず、雑誌のレイアウトや映画のポスターなど、異分野のデザインからインスピレーションを得ることも非常に有効です。

Q3. フリーランスになったばかりです。最初の案件はどうやって獲得するのがおすすめですか?

A3. 実績がないうちは、クラウドソーシングサイトやエージェントを活用して、まずは小さな案件でも確実にこなし、実績と評価を積み重ねることが最優先です。並行して、知人や友人に「ホームページ制作の仕事を始めた」と伝え、身近なところから仕事を紹介してもらうのも良いでしょう。その際は、たとえ安価な案件でもプロとして手を抜かず、期待以上の成果を出すことで、次の仕事につながる信頼を勝ち取ることができます。

Q4. クライアントへのヒアリングで、いつも聞き漏らしが発生してしまいます。コツはありますか?

A4. 自分なりのオリジナル「ヒアリングシート」を作成し、それに沿って質問を進めることを強くおすすめします。サイトの目的、ターゲットユーザー、競合サイト、提供したい価値、デザインの好み、予算、公開希望日など、事前に聞くべき項目を網羅しておくことで、聞き漏らしを防ぎます。ただし、シートを埋めることが目的にならないよう注意が必要です。シートの項目をきっかけに、対話を深掘りしていくことを意識しましょう。

Q5. 納品後のサイトが、全く更新されずに放置されてしまいます。どうすればいいですか?

A5. 多くのクライアントは「更新の重要性は分かっているが、時間がない、やり方がわからない」という状態です。納品時の更新レクチャーに加え、「最初の3記事は一緒に書きましょう!」といった伴走支援を提案したり、月1回30分程度のオンラインミーティングで「今月は何を発信しますか?」と壁打ち相手になったりするのも効果的です。サイトを放置することの機会損失と、更新を続けることのメリットを具体的に伝え、クライアントのモチベーションを高める働きかけが大切です。

Q6. 自分のスキルの市場価値が分からず、キャリアプランが描けません。

A6. 転職サイトやフリーランスエージェントに登録し、キャリアカウンセリングを受けてみるのが客観的な視点を得るための一つの方法です。自分のスキルセットでどのような案件があり、年収レンジはどれくらいなのかを知ることで、市場価値を把握できます。また、少し上のレベルで活躍しているロールモデルとなる制作者を見つけ、その人がどのようなスキルを習得し、どんなキャリアを歩んでいるかを研究することも、自身の進むべき道を考える上で非常に参考になります。

Q7. 制作と直接関係ない、マーケティングやライティングの知識も学ぶべきでしょうか?

A7. 学ぶべきです。むしろ、それらの知識こそが、他の制作者との大きな差別化要因となります。クライアントが本当に求めているのは「綺麗なホームページ」ではなく、「ホームページを使った事業の成功」です。マーケティングの知識があれば、より成果につながるサイト設計を提案できます。ライティングの知識があれば、ユーザーの心に響くキャッチコピーや文章を提案できます。制作スキルを軸に、周辺領域の知識を貪欲に吸収することで、あなたの提供価値は飛躍的に高まります。

まとめ

ホームページ制作者が抱える悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。デザイン、技術、マーケティング、ビジネス、そしてキャリア…。多くの制作者が同じような壁にぶつかり、乗り越え、成長しています。

大切なのは、悩みを一人で抱え込まず、課題の核心を正しく見極め、具体的な一歩を踏み出すことです。

  • 曖昧な要望には、徹底的な対話とビジュアルでの認識合わせを。
  • 速すぎる技術には、戦略的な選択と集中を。
  • 出ない成果には、クライアントとの二人三脚での改善サイクルを。

この記事で紹介した改善ステップが、あなたの悩みを解決し、ホームページ制作者として、そして一人のビジネスパーソンとして、さらに高いステージへ進むための一助となれば幸いです。悩みの先には、クライアントの事業を成功に導く「最高のパートナー」として活躍する、あなたの未来が待っています。

ホームページ制作やリニューアル、サイト運営サポートの事例

ホームページ制作やリニューアル、サイト運営サポートの事例を随時ご紹介させていただきます。ただし事例については、基本的に実名掲載の実績とは異なり、実際の要望や予算、ボリューム、公開までの時間といった具体的な内容を紹介させていただきます。
それぞれのご依頼者のプライバシーやその他公開できない情報などもありますので、ご依頼者が特定できるような情報は掲載していません。

サイト運営サポートをご希望の方

サイト運営サポートをご希望の方は、サイト運営サポートのページをご覧ください。

サイト運営サポートサービスでは3つのプランをお選びいただけます。
ホームページ運営者としての安心と少しのサポートを求めるなら、プランA
ホームページの積極的な運営とプロによる提案を必要とするなら、プランB
ホームページを本気で効果あるものにしたいと考えるのであれば、プランC
3つのプランの中にピンとくるものが無ければアレンジプラン。
アレンジプランはご要望やご予算をお伺いしてご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

ホームページリニューアルをご希望の方

ホームページリニューアルをご希望の方は、ホームページリニューアルのページをご覧ください。

ホームページリニューアルサービスでは3つのプランをお選びいただけます。
すべてのプランにはホームページリニューアル作業とリニューアル公開後1年間のサポートが含まれています。リニューアル作業の内容は同じになっていますので、希望するサポート内容からプランをお選びください。

ホームページ運営者としての安心と少しのサポートを求めるなら、ライトプラン
ホームページの積極的な運営とプロによる提案を必要とするなら、スタンダードプラン
ホームページを本気で効果あるものにしたいと考えるのであれば、プレミアムプラン
3つのプランの中にピンとくるものが無ければアレンジプラン。
アレンジプランはご要望やご予算をお伺いしてご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

ホームページ制作をご希望の方

ホームページ制作をご希望の方は、勝てるホームページ制作のページをご覧ください。

ホームページ制作サービスでは3つのプランをお選びいただけます。
すべてのプランにはホームページ制作作業とリニューアル公開後1年間のサポートが含まれています。制作作業の内容は同じになっていますので、希望するサポート内容からプランをお選びください。

ホームページ運営者としての安心と少しのサポートを求めるなら、Sプラン
ホームページの積極的な運営とプロによる提案を必要とするなら、Mプラン
ホームページを本気で効果あるものにしたいと考えるのであれば、Lプラン
3つのプランの中にピンとくるものが無ければアレンジプラン
アレンジプランはご要望やご予算をお伺いしてご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

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ozasaオフィスピコッツ株式会社代表取締役社長
1971年奈良県生まれ。京都・滋賀を中心にWeb制作・DX支援を行うオフィスピコッツ株式会社代表取締役。制作歴25年以上、官公庁・大手企業から中小まで多様なサイトを手掛け、Webアワードでの受賞歴多数。ホームページ制作、リニューアル、SEO、補助金活用、多言語EC・オンラインショップ運営支援までワンストップ提供するWebマーケティングのプロ。新規事業立ち上げ支援や自治体DX、各種プロジェクトのアドバイザー、大学校・高校講師、PTA会長など活動は多岐にわたる。琵琶湖観光PRにも情熱を注ぎ、地域企業の売上向上と持続的成長を伴走型で支援し、日々研鑽を続けている。