WordPressの古いバージョンにおける最大の脆弱性:セキュリティリスクの中心

WordPressは世界中で広く使われているコンテンツ管理システム(CMS)ですが、その人気ゆえに攻撃者の標的にもなりやすいプラットフォームです。特に、古いバージョンのWordPressを使用し続けることは、深刻なセキュリティリスクを抱えることになります。本記事では、WordPressの古いバージョンにおいて最も脆弱な部分を詳しく解説し、そのリスクと対策について探ります。

REST APIの脆弱性:古いWordPressの最大の弱点

WordPressの古いバージョンにおいて最も脆弱な部分は、REST API(Representational State Transfer Application Programming Interface)の実装にあります。特に、WordPress 4.7.0および4.7.1に存在したREST APIの脆弱性は、史上最大規模のWordPress攻撃を引き起こした原因となりました。

REST APIの脆弱性の詳細

この脆弱性は、REST APIのエンドポイントにおいて投稿IDの検証が不十分だったことに起因します。具体的には、以下のような問題がありました。

  1. 権限のないユーザーでも任意の投稿内容を改ざんできる
  2. 攻撃の実行が非常に簡単
  3. 広範囲のWordPressサイトに影響を与える可能性がある

この脆弱性を悪用すると、攻撃者は特定の内容を含んだリクエストをGETまたはPOSTデータとして攻撃対象のURLに送信することで、コンテンツの改ざんを行うことができました。

攻撃の規模と影響

この脆弱性を狙った攻撃は、非常に大規模なものとなりました。

  • 全世界で155万以上のサイトが攻撃を受けた
  • 脆弱性の情報が公開されてから48時間以内に、悪用するためのコードがインターネット上で公開された
  • 多くのサイトでトップページの内容が書き換えられたり、悪意のあるスクリプトが挿入されたりした

この事例は、WordPressの古いバージョンを使用し続けることの危険性を如実に示しています。WordPress開発チームは脆弱性を発見次第、迅速に対応していますが、サイト管理者側でアップデートを適用しない限り、リスクは残り続けます。

プラグインの脆弱性:古いバージョンの第二の弱点

WordPressの古いバージョンにおける第二の大きな脆弱性は、プラグインに関するものです。プラグインは機能を拡張するのに大変便利ですが、その拡張性がセキュリティの脆弱性を孕む場合があります。

プラグインの脆弱性の特徴

  1. 多様な開発者による作成
    プラグインは企業やオープンソースコミュニティ、個人など、さまざまな開発者によって作成されています。そのため、セキュリティに対する意識やスキルにばらつきがあります。
  2. セキュリティアップデートの遅れ
    一部のプラグインでは、セキュリティアップデートが提供されず、既知の脆弱性が放置されてしまうことがあります。
  3. プラグイン間の相互作用
    複数のプラグインを組み込むことで、プラグイン同士が互いに影響し合い、予期せぬセキュリティホールを生み出す可能性があります。

プラグインの脆弱性の具体例

  1. WP Job Managerプラグインの脆弱性
    求人情報用のプラグイン「WP Job Manager」の1.26.2より前のバージョンには、アクセス制限不備の脆弱性がありました。この脆弱性が悪用されると、リモートにいる第三者によって画像ファイルをアップロードされる可能性がありました。
  2. WP Mobile Detectorプラグインの脆弱性
    モバイル対応用プラグイン「WP Mobile Detector」には、任意のファイルをアップロードできてしまう脆弱性がありました。この脆弱性は、信頼できないソースからの入力内容を検証できないというものでした。

これらの事例は、プラグインの脆弱性が古いバージョンのWordPressにおいて重大なセキュリティリスクとなることを示しています。

テーマの脆弱性:見過ごされがちな弱点

WordPressの古いバージョンにおける第三の脆弱性は、テーマに関するものです。テーマはプラグインよりもさらに容易に作成できるため、多様な開発者によって作成されています。

テーマの脆弱性の特徴

  1. 品質のばらつき
    ソースコードの品質に問題がある場合があり、信頼性の低い開発者が作成したテーマにはセキュリティの脆弱性が存在する可能性が高くなります。
  2. セキュリティアップデートの欠如
    脆弱性が確認された際も、セキュリティアップデートが提供されずに放置されるケースがあります。
  3. 不適切な権限要求
    一部のテーマは、不適切な権限を要求したり、広告やスパム、悪意のある不正なコードが埋め込まれていることがあります。

テーマの脆弱性の具体例

OneToneテーマの脆弱性は、認証なしでデータベースに侵入できる問題がありました。このような脆弱性は、サイトの完全な制御権を攻撃者に与えてしまう可能性があります。

XMLRPCの脆弱性:古いバージョンの隠れた脅威

XMLRPCは、WordPressと他のシステムを連携させるための機能ですが、古いバージョンのWordPressでは、この機能を悪用したパスワード総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)が可能でした。

XMLRPCの脆弱性の詳細

  1. system.multicallメソッドの悪用
    攻撃者は、XMLRPCのsystem.multicallメソッドを利用して、一度のリクエストで複数のログイン試行を行うことができました。
  2. 効率的なパスワード推測
    通常のログイン画面を使った攻撃よりも効率的にパスワードを推測することが可能でした。
  3. 検出の困難さ
    この攻撃方法は、通常のログイン試行とは異なるため、検出が困難でした。

この脆弱性により、多くのWordPressサイトで不正ログインが発生し、コンテンツの改ざんやマルウェアの埋め込みなどの被害が報告されました。

SQLインジェクションの脆弱性:データベースを狙う攻撃

古いバージョンのWordPressには、SQLインジェクション攻撃に対する脆弱性も存在していました。この脆弱性は、ユーザー入力の検証が不十分だったことに起因します。

SQLインジェクションの脆弱性の詳細

  1. 不正なSQLクエリの実行
    攻撃者は、特殊な文字列を含むクエリを送信することで、データベースに不正なSQLコマンドを実行させることができました。
  2. データベース情報の漏洩
    この攻撃により、データベース内の機密情報(ユーザー名、パスワードハッシュ、メールアドレスなど)を抽出することが可能でした。
  3. 広範囲な影響
    SQLインジェクション攻撃は、サイト全体のデータを危険にさらす可能性があるため、非常に深刻な脆弱性でした。

この脆弱性により、多くのWordPressサイトでユーザー情報が漏洩し、一部のサイトではパスワードの不正利用や個人情報の悪用が報告されました。

古いPHPバージョンの使用:基盤技術の脆弱性

WordPressの古いバージョンを使用し続けることの危険性は、WordPressそのものだけでなく、その基盤となる技術にも及びます。特に、古いバージョンのPHPを使用し続けることは、重大なセキュリティリスクとなります。

古いPHPバージョンの問題点

  1. セキュリティサポートの終了
    PHP 5.6のセキュリティサポートは2018年末に正式に終了しており、それ以前のPHP 5のバージョンに至っては、何年もの間セキュリティサポートが提供されていません。
  2. 既知の脆弱性の放置
    5.6未満のPHPバージョンを使用すると、問題の修正がされていないPHPの脆弱性というリスクに晒されてしまいます。
  3. パフォーマンスの低下
    古いバージョンのPHPは、最新バージョンと比べてパフォーマンスが劣ります。これは、サイトの読み込み速度やユーザー体験に直接影響を与えます。
  4. 新機能の利用不可
    最新のWordPress機能やプラグインの中には、新しいPHPバージョンを要求するものがあります。古いPHPを使用し続けると、これらの新機能を利用できなくなる可能性があります。

WordPressサイトの28%が5.6未満のPHPバージョンを使用しているという事実は、多くのサイトが潜在的なセキュリティリスクに晒されていることを示しています。

まとめ:古いバージョンのWordPressが抱える脆弱性

WordPressの古いバージョンにおける最も脆弱な部分は、以下のようにまとめることができます。

  1. REST APIの脆弱性
  2. プラグインの脆弱性
  3. テーマの脆弱性
  4. XMLRPCの脆弱性
  5. SQLインジェクションの脆弱性
  6. 古いPHPバージョンの使用

これらの脆弱性は、不正アクセス、データ漏洩、サイト改ざん、マルウェア感染など、深刻な被害をもたらす可能性があります。

対策としては、以下のような方法が挙げられます。

  1. WordPressを常に最新バージョンに保つ
  2. プラグインとテーマを定期的に更新し、不要なものは削除する
  3. 信頼できるソースからのみプラグインとテーマをインストールする
  4. 強力なパスワードを使用し、定期的に変更する
  5. セキュリティプラグインを導入する
  6. PHPを含むサーバー環境を最新の状態に保つ
  7. 定期的にバックアップを取る
  8. セキュリティ監査を定期的に実施する

WordPressの脆弱性は、適切な管理とセキュリティ対策によって大幅に軽減することができます。しかし、完全に脆弱性をなくすことは難しいため、継続的にセキュリティ対策を行っていく必要があります。サイト管理者は、常に最新のセキュリティ情報に注意を払い、適切なタイミングでアップデートを行うことが求められます。

これらの対策を講じることで、WordPressサイトのセキュリティを大幅に向上させ、安全で効果的なウェブサイトの運営が可能となります。セキュリティは継続的な取り組みが必要な分野であり、常に最新の脅威と対策について情報をアップデートし、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることをおすすめします。

WordPressでのホームページ制作やリニューアル、サイト運営などでお悩みの方々は遠慮なくご相談ください。

WordPress関連記事

ホームページリニューアルやサイト運営サポートの事例

ホームページリニューアルやサイト運営サポートの事例を随時ご紹介させていただきます。ただし事例については、基本的に実名掲載の実績とは異なり、実際の要望や予算、ボリューム、公開までの時間といった具体的な内容を紹介させていただきます。
それぞれのご依頼者のプライバシーやその他公開できない情報などもありますので、ご依頼者が特定できるような情報は掲載していません。

WordPressのサイト運営サポートをご希望の方

WordPressのサイト運営サポートをご希望の方は、サイト運営サポートのページをご覧ください。

サイト運営サポートサービスでは3つのプランをお選びいただけます。
ホームページ運営者としての安心と少しのサポートを求めるなら、プランA
ホームページの積極的な運営とプロによる提案を必要とするなら、プランB
ホームページを本気で効果あるものにしたいと考えるのであれば、プランC
3つのプランの中にピンとくるものが無ければアレンジプラン。
アレンジプランはご要望やご予算をお伺いしてご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

WordPressのホームページリニューアルをご希望の方

WordPressのホームページリニューアルをご希望の方は、ホームページリニューアルのページをご覧ください。

ホームページリニューアルサービスでは3つのプランをお選びいただけます。
すべてのプランにはホームページリニューアル作業とリニューアル公開後1年間のサポートが含まれています。リニューアル作業の内容は同じになっていますので、希望するサポート内容からプランをお選びください。

ホームページ運営者としての安心と少しのサポートを求めるなら、ライトプラン
ホームページの積極的な運営とプロによる提案を必要とするなら、スタンダードプラン
ホームページを本気で効果あるものにしたいと考えるのであれば、プレミアムプラン
3つのプランの中にピンとくるものが無ければアレンジプラン。
アレンジプランはご要望やご予算をお伺いしてご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT US
アバター画像
ozasaオフィスピコッツ株式会社代表取締役社長
1971年奈良県生まれ。京都・滋賀を中心にWeb制作・DX支援を行うオフィスピコッツ株式会社代表取締役。制作歴25年以上、官公庁・大手企業から中小まで多様なサイトを手掛け、Webアワードでの受賞歴多数。ホームページ制作、リニューアル、SEO、補助金活用、多言語EC・オンラインショップ運営支援までワンストップ提供するWebマーケティングのプロ。新規事業立ち上げ支援や自治体DX、各種プロジェクトのアドバイザー、大学校・高校講師、PTA会長など活動は多岐にわたる。琵琶湖観光PRにも情熱を注ぎ、地域企業の売上向上と持続的成長を伴走型で支援し、日々研鑽を続けている。