滋賀の恵みを物語に。果実卸売業の価値を未来へつなぐホームページ戦略

もくじ

はじめに

滋賀県内で果実卸売業を営んでおられる皆様、日々の経営において、このような課題やお悩みを感じてはいないでしょうか。長年培ってきた経験と目利きで、品質の高い果実を仕入れている。生産者の方々とも深い信頼関係を築き、安定した供給体制を維持している。しかし、近年はスーパーや飲食店からの価格競争が激しく、丹精込めて選んだ果実の価値が正当に評価されにくい。また、新たな販路を開拓したくても、何から手をつければ良いのかわからない。人手不足や後継者問題もあり、会社の将来に漠然とした不安を感じることもあるかもしれません。これらの課題は、多くの卸売業者様が直面している現実です。

一方で、消費者の食に対する意識は大きく変化しています。単に「安くて美味しい」だけでなく、「どこで、誰が、どのように作ったのか」という背景にあるストーリーや、その商品が持つ独自の価値に関心が集まっています。この変化は、卸売業にとって大きなビジネスチャンスとなり得ます。その鍵を握るのが、ホームページを活用したストーリーテリングです。ホームページは、もはや単なる電子看板ではありません。企業の理念や情熱、商品の魅力を深く伝え、顧客との絆を育むための強力なメディアです。

本記事では、滋賀の果実卸売業の皆様が、自社の強みを最大限に活かし、ビジネスを新たなステージへと押し上げるためのホームページ戦略、その核となるストーリーテリングの具体的な手法について、実践的な視点から詳しく解説していきます。この記事を読み終える頃には、自社のホームページをリニューアルし、未来への投資を始めたいと感じていただけることでしょう。

なぜ今、滋賀の果実卸売業にストーリーテリングが必要なのか?

現代の市場において、単に商品を右から左へ流すだけの中間流通業の役割は、その価値を問われ始めています。特に、滋賀県という豊かな自然と歴史に恵まれた土地で事業を営む果実卸売業者にとって、価格以外の付加価値をいかにして取引先に伝え、最終的には消費者にまで届けるかが、持続的な成長のための重要な鍵となります。ここで強力な武器となるのが「ストーリーテリング」です。企業の歴史、商品へのこだわり、生産者との関係性といった「物語」は、無機質になりがちな商取引に血を通わせ、顧客の心を動かす力を秘めています。

価格競争から抜け出すための「価値」の伝え方

果実の価格は、天候や市場の需給バランスによって日々変動します。そのため、卸売業は常に厳しい価格競争のプレッシャーに晒されがちです。「あっちの卸業者は1ケースあたり何円安い」といった価格だけの比較で取引先を失う経験は、多くの経営者がお持ちではないでしょうか。このような消耗戦から抜け出すためには、価格以外の「価値」を明確に提示し、取引先に「高くてもこの会社から仕入れたい」と思わせる魅力が必要です。その価値を伝える最も効果的な手法が、ストーリーテリングに他なりません。

例えば、ただ「甘いイチゴです」と説明するのではなく、そのイチゴが生まれるまでの物語を語るのです。琵琶湖の豊かな水と、穏やかな気候に恵まれた特定の地域で、何代にもわたってイチゴ栽培を続ける農家の情熱。土作りからこだわり、減農薬で大切に育てられた一粒一粒。その生産者の想いを深く理解し、最高の状態でお届けすることを使命とする自社の哲学。こうした物語は、果実そのものに「背景」と「意味」を与え、単なる商品以上の特別な価値を創出します。

ホームページ上で、生産者のインタビュー動画や、栽培風景の美しい写真を交えながらこうしたストーリーを紹介することで、取引先のバイヤーは、その果実を自身の店舗でどのように販売すべきか、その価値をどう顧客に伝えるべきかのヒントを得ることができます。結果として、安易な値引き要求ではなく、価値に基づいた適正な価格での取引が実現しやすくなるのです。

産地「滋賀」のブランド力を最大限に活かす

滋賀県は、日本最大の湖である琵琶湖を中心に、豊かな自然環境が広がっています。この恵まれた環境は、質の高い農産物を育む土壌であり、果実卸売業にとって大きな強みとなります。アドベリー(ボイセンベリー)や彦根梨、比良すいかといった地域特有の果実はもちろん、県内で栽培される多種多様な果物には、「近江」という歴史的なブランドイメージが重なります。

この「滋賀ブランド」を最大限に活用するためにも、ストーリーテリングは不可欠です。例えば、「環境こだわり農産物」の認証を受けている生産者の果実を扱う際には、その背景にある物語を丁寧に伝えるべきです。

なぜ、その生産者は農薬や化学肥料を減らす努力をしているのか。それは、母なる琵琶湖の環境を守り、未来の子供たちに美しい自然を残したいという強い想いがあるからかもしれません。その想いに共感し、卸売業者としてその活動を支えているという自社の姿勢を発信することで、企業の社会的責任(CSR)に対する意識の高さをアピールできます。これは、環境配慮を重視する飲食店や小売店からの強い支持を得ることに繋がります。

また、古くから京都や大阪といった大消費地を結ぶ交通の要衝であった滋賀の歴史的背景を物語に組み込むことも有効です。「かつて近江商人が全国を行脚したように、私たちもまた、滋賀の素晴らしい果実を全国の食卓へ届ける架け橋となる」といったストーリーは、企業のスケール感と使命感を伝え、取引先に安心感と信頼感を与えるでしょう。

ホームページを通じて、こうした滋賀ならではの物語を発信し続けることが、他県との差別化を図り、独自のブランドを確立する上で極めて重要なのです。

BtoB取引先との信頼関係を深める物語の力

果実卸売業の主戦場は、スーパーマーケット、八百屋、飲食店、ホテルといったBtoB(企業間取引)です。BtoBの取引において最も重要なのは、価格や品質はもちろんのこと、長期的な「信頼関係」です。この信頼をいかにして築き、深めていくか。ここでもストーリーテリングが大きな役割を果たします。新規の取引先があなたの会社のホームページを訪れた時、そこに並んでいるのが果物の写真と価格表だけだとしたら、他社との違いはほとんど伝わりません。

しかし、そこに社長や社員の顔が見え、彼らの仕事に対する情熱や哲学が自身の言葉で語られていたらどうでしょうか。「私たちは、単に果物を運ぶだけではありません。生産者の汗と努力、そしてその果実が持つ最高の美味しさを、責任を持ってお届けするパートナーです」というメッセージ。日々の業務の中で、どのような工夫をしているのか。

例えば、早朝の市場での目利きの様子、繊細な果物を傷つけないための配送の工夫、取引先の要望に細やかに応える営業担当者の奮闘ぶりなどを、ブログや写真付きの記事で紹介するのです。こうした情報発信は、取引を検討している企業に対して、専門性の高さと誠実な企業姿勢を伝え、安心感を与えます。

また、既存の取引先にとっても、自社がどのような想いを持つ企業と付き合っているのかを再認識する機会となり、関係性がより強固なものになります。例えば、「株式会社共盛輸送」が滋賀青果の事業を承継し、従業員との対話や新規開拓を通じて黒字化を達成した事例のように、企業の挑戦や変革の物語もまた、取引先の共感を呼び、応援したいという気持ちを育む力強いコンテンツとなるのです。

顧客の心を掴む、滋賀の果実卸売業ならではのストーリー設計

単に事実を羅列するだけでは、人の心に響く物語にはなりません。読者である取引先や、その先にいる消費者の感情を揺さぶり、記憶に残るストーリーを構築するには、戦略的な設計が必要です。滋賀という土地の特性と、果実卸売業というビジネスの核心を踏まえ、どのような物語を紡いでいくべきか。会社の根幹をなす「過去」、日々の事業活動である「現在」、そして未来への展望を示す「未来」という3つの時間軸でストーリーを組み立てることで、立体的で深みのある企業像を描き出すことができます。

創業の物語:歴史と理念を伝える

すべての会社には、その始まりの物語があります。なぜ、この事業を始めたのか。創業者が抱いていた夢や志は何だったのか。その原点を語ることは、会社の「根」や「幹」が何であるかを示す上で非常に重要です。特に、親子代々事業を継承してきたような歴史のある会社であれば、その歴史自体が他社には真似のできない強力なブランド資産となります。ホームページの「会社概要」や「代表挨拶」のページで、創業当時のエピソードを具体的に語りましょう。

例えば、「戦後の何もない時代、人々の心に少しでも彩りと潤いを届けたいという想いから、創業者である祖父がリヤカー一台で果物の行商を始めたのが我が社の原点です」といった具体的な情景が浮かぶようなストーリーは、読者の心に強く残ります。また、創業以来、大切にし続けてきた経営理念や哲学を明確に言語化することも不可欠です。「我々の仕事は、生産者と食卓をつなぐこと。

だからこそ、どちらに対しても常に誠実であれ」といった、企業活動の根底に流れる普遍的な価値観を示すことで、単なる利益追求の組織ではない、社会的な使命を帯びた企業としての信頼性を高めることができます。たとえ創業から日が浅い会社であっても、なぜ滋賀という土地で、なぜ果実卸売業を始めようと決意したのか、その熱い想いを語ることで、顧客の共感を呼ぶことは十分に可能です。会社の歴史は、企業のアイデンティティそのものであり、すべてのストーリーの土台となるのです。

「一玉の果実」の物語:生産者との絆を語る

卸売業の価値は、どれだけ優れた生産者と繋がり、そのこだわりを深く理解しているかにかかっています。その価値を伝えるためには、スポットライトを自社だけでなく、パートナーである生産者にも当てる必要があります。ホームページ上で、「今月の顔」といったような特集ページを設け、提携する生産者を一人ひとり丁寧に紹介していきましょう。例えば、高島市でアドベリーを無農薬栽培している「はなつむぎベリーファーム」のような特徴的な生産者がいれば、その物語は絶好のコンテンツになります。

なぜ無農薬にこだわるのか、栽培における苦労話、収穫の喜びなどを、生産者自身の言葉で語ってもらうインタビュー記事や動画は、非常に説得力があります。生産者の顔写真や、太陽の光を浴びて輝く果実、手入れの行き届いた畑の風景といったビジュアル要素をふんだんに盛り込むことで、記事はさらに魅力的になります。こうしたコンテンツは、果実の安全性や品質の高さを裏付ける何よりの証拠となります。

また、「この人が作った果物なら間違いない」という信頼感が、卸売業者であるあなたの会社への信頼にも繋がっていきます。さらに、生産者との共同での取り組み、例えば新品種の開発秘話や、気候変動に対応するための新たな栽培方法への挑戦といったストーリーを発信することも有効です。それは、卸売業者が単なる「仕入れ先」としてではなく、生産者と手を取り合ってより良いものを作り出そうとする「共創パートナー」であることを示すものであり、取引先に対して先進的で前向きな企業イメージを与えることに繋がるでしょう。

未来への物語:ビジョンと挑戦を発信する

顧客が長期的なパートナーとして選びたいのは、過去の実績や現在の安定性だけでなく、未来への成長性を感じさせてくれる企業です。自社がこれからどこへ向かおうとしているのか、どのような未来を描いているのかという「ビジョン」を語ることは、取引先に期待感とワクワク感を与え、共に未来を歩みたいと思わせる力があります。

例えば、「滋賀の果実を、世界へ」といった壮大なビジョンを掲げ、その実現に向けた具体的な挑戦を発信していくのはどうでしょうか。海外への輸出に向けた取り組み、新しい加工品の開発、IT技術を活用した先進的な物流システムの導入計画などを具体的に示すことで、ビジョンが単なる絵空事ではないことを証明できます。「東京荏原青果株式会社」が市場内の管理体制強化のためにネットワークカメラを導入したように、業界の課題解決に向けた具体的なDXの取り組みを発信することも、企業の先進性を示す上で効果的です。

また、地域社会への貢献や、食育への取り組みといった、より広い視野での活動計画を語ることも重要です。例えば、「県内の子どもたちに、もっと果物の美味しさや滋賀の農業の素晴らしさを知ってもらうため、小学校での出前授業を企画しています」といったストーリーは、企業のブランドイメージを大きく向上させます。会社の未来を語ることは、社長自身の夢を語ることでもあります。

その情熱が伝われば、従業員のモチベーション向上にも繋がり、会社全体に活気が生まれます。ホームページは、未来への羅針盤を示す場所であり、社内外のステークホルダーを巻き込み、同じ船に乗せるための重要なコミュニケーションツールとなるのです。

ストーリーを彩るコンテンツ制作とホームページへの実装

練り上げたストーリーも、それを表現するための器、つまりホームページ上のコンテンツが魅力的でなければ、読者の心には届きません。文字だけの退屈なページでは、せっかくの物語も読まれずに閉じられてしまいます。滋賀の果実が持つ瑞々しさや、生産者の情熱、企業の活気を生き生きと伝えるためには、五感を刺激するような多彩なコンテンツを戦略的に制作し、ホームページに実装していく必要があります。訪問者が思わず引き込まれ、ページの奥深くまで探求したくなるような、魅力的なコンテンツ制作の具体的な手法について解説します。

五感を刺激する写真と動画の活用術

果実の魅力を伝える上で、ビジュアルコンテンツ、特に写真と動画の力は絶大です。「百聞は一見に如かず」という言葉通り、たった一枚の写真が、千の言葉よりも雄弁に商品の価値を語ることがあります。 ホームページ制作において、プロのカメラマンに依頼して高品質な写真を撮影することは、非常に費用対効果の高い投資です。朝露に濡れるイチゴの艶やかな赤色、完熟したメロンの網目の美しさ、カットした瞬間に溢れ出す果汁のきらめき。こうした写真は、見る人の食欲を直接的に刺激し、品質の高さを直感的に伝えます。

また、商品写真だけでなく、生産者の働く姿や、活気あふれる市場の様子、社員が真剣な眼差しで果物を選別するシーンなども重要な撮影対象です。これらの写真は、ストーリーにリアリティと温かみを与えます。さらに、動画コンテンツは、写真以上に多くの情報を、より感情的に伝えることが可能です。

例えば、トップページに滋賀の美しい農園風景をドローンで撮影した短い動画を配置するだけで、訪問者の心を一瞬で掴むことができます。生産者へのインタビュー動画では、その人の人柄や情熱が声のトーンや表情からダイレクトに伝わります。また、卸売りの現場、例えば果物がトラックに積み込まれ、取引先へと届けられるまでの一連の流れをタイムラプス動画で見せるのも面白いでしょう。

こうしたビジュアルコンテンツは、スマートフォンでの閲覧が主流の現代において、ユーザーの離脱を防ぎ、滞在時間を延ばす上でも極めて効果的なのです。

読み手を惹きつけるブログ・コラムのテーマ設定

ホームページに「お知らせ」以外の定期的な情報発信の場として、ブログやコラムのセクションを設けることは、専門性を示し、潜在顧客との接点を増やす上で非常に有効です。重要なのは、そのテーマ設定です。単なる業務日誌ではなく、読者である取引先(飲食店のシェフや小売店のバイヤーなど)にとって「有益」で「興味深い」情報とは何か、という視点でテーマを考える必要があります。

例えば、「プロが教える!美味しいメロンの見分け方と最適な追熟方法」「旬のシャインマスカットを使った、夏の新メニュー開発のヒント」「意外と知らない?滋賀県産イチジクの品種ごとの特徴と使い分け」といった、専門的な知識を提供する記事は、プロの料理人やバイヤーから重宝されるでしょう。また、季節性を意識したテーマ設定も重要です。「小林青果株式会社」がブロッコリーの指定野菜追加という時事ニュースに合わせて情報発信し、メディア掲載に繋がったように、市場のトレンドや話題に合わせたコンテンツは注目を集めやすくなります。

「今年の夏は猛暑予報!熱中症対策におすすめの水分たっぷり果物特集」や、「クリスマスシーズン到来!ケーキを彩る国産ベリー類のご提案」といった記事は、取引先の仕入れ計画の参考にもなります。さらに、「産地訪問レポート」として、滋賀県内の様々な農園を訪れた際の様子を詳しく紹介するシリーズも人気コンテンツになり得ます。こうした価値ある情報を継続的に発信することで、ホームページは単なる会社の紹介ツールから、業界関係者が定期的に訪れる情報プラットフォームへと進化し、SEO(検索エンジン最適化)の観点からも大きなメリットが生まれます。

お客様の声を「成功事例」として紹介する方法

自社のサービスの素晴らしさをどれだけ語っても、それはあくまで一方的な主張です。その価値を客観的に証明し、信頼性を飛躍的に高めるのが、「お客様の声」、つまり導入事例の紹介です。特にBtoB取引においては、「どのような企業が、どのような課題を抱え、自社のサービスを導入した結果、どう成功したのか」というサクセスストーリーは、導入を検討している企業にとって最も知りたい情報の一つです。

まずは、日頃から関係性の良い取引先に協力をお願いしてみましょう。インタビュー形式で、なぜ自社を選んでくれたのか、取引を始めてからどのようなメリットがあったかを具体的に語ってもらうのです。例えば、「〇〇青果さんと取引を始めてから、お客様に『ここの果物はいつも新鮮で美味しいね』と褒められることが格段に増えました」といった具体的なコメントは、何よりの説得力を持ちます。飲食店のシェフであれば、自社の果物を使った新メニューの写真と共に、「この瑞々しいアドベリーのおかげで、店の看板となるデザートが生まれました」といった声を掲載できれば理想的です。

インタビュー記事を作成する際は、単にお客様のコメントを並べるだけでなく、そのお客様がどのようなお店や事業をされているのかという背景情報も丁寧に紹介することで、読者は自身の状況と照らし合わせて参考にしやすくなります。こうした成功事例のコンテンツがホームページに蓄積されていくことで、それは会社の貴重な「実績カタログ」となり、新規顧客に対する強力な営業ツールとして機能するようになるのです。

ホームページリニューアルで実現する、戦略的ストーリーテリング

素晴らしいストーリーと魅力的なコンテンツを用意しても、それらを盛り込むホームページの器自体が古く、使いづらいものでは効果は半減してしまいます。特にスマートフォンでの閲覧が当たり前になった現代において、旧来のPC表示にしか最適化されていないホームページは、訪問者にストレスを与えるだけでなく、ビジネスチャンスを逃す大きな原因となります。ストーリーテリングの効果を最大化するためには、戦略的な視点に基づいたホームページのリニューアルが不可欠です。デザインの刷新はもちろん、ターゲット顧客の行動を深く理解した上での情報設計や、検索エンジンに見つけてもらいやすくする工夫、そして最終的なゴールである「お問い合わせ」へとスムーズに導くための仕掛け作りが求められます。

ターゲット顧客に合わせた情報設計(UI/UX)

ホームページリニューアルにおいて、デザインの美しさ以上に重要なのが、訪問者が迷わず、ストレスなく目的の情報にたどり着ける「情報設計」です。これを専門的にはUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)と呼びます。あなたの会社のホームページを訪れるのは誰でしょうか?大口の仕入れを検討しているスーパーのバイヤー、こだわりの食材を探しているレストランのシェフ、あるいは新規取引先を探している八百屋の店主かもしれません。

それぞれのターゲット顧客が「何を知りたいのか」を徹底的に考え、彼らが求める情報に最短でアクセスできるような構造を設計する必要があります。 例えば、レストランのシェフは、珍しい品種や季節限定の果物、生産者のこだわりといった品質に関する情報を重視するかもしれません。一方で、スーパーのバイヤーは、安定供給が可能な定番商品の一覧や、ロット単位での価格、配送エリアといった取引条件に関する情報を素早く確認したいと考えるでしょう。

これらの異なるニーズに応えるため、グローバルナビゲーション(サイト上部のメニュー)を「当社の強み」「取扱商品」「生産者の声」「導入事例」「会社概要」「お問い合わせ」のように分かりやすく分類し、階層を深くしすぎないことが重要です。

また、スマートフォンで見た時に、文字が小さすぎたり、ボタンが押しにくかったりするのは致命的です。あらゆるデバイスで快適な閲覧体験を提供できる「レスポンシブデザイン」の採用は、今や必須条件と言えるでしょう。訪問者の視点に立った、親切で分かりやすい情報設計こそが、ストーリーを深く読んでもらい、企業の魅力を最大限に伝えるための土台となるのです。

SEO対策を意識したキーワードとコンテンツ配置

どれだけ素晴らしいホームページを作っても、誰にも見つけてもらえなければ存在しないのと同じです。Googleなどの検索エンジンで、潜在的な顧客が検索するであろうキーワードで上位に表示されるための施策、すなわちSEO(検索エンジン最適化)は、ホームページの成功を左右する極めて重要な要素です。まずは、ターゲット顧客がどのような言葉で情報を探しているかを想像し、キーワードをリストアップすることから始めます。

例えば、「滋賀 果物 卸売」「業務用 フルーツ 仕入れ 近畿」「彦根梨 飲食店 卸」といった、地域名や業務内容を組み合わせた具体的なキーワードが考えられます。次に、これらのキーワードをホームページ内の各所に自然な形で盛り込んでいきます。特に、ページのタイトル(titleタグ)や見出し(h1, h2タグ)、本文中の重要な箇所にキーワードを含めることが効果的です。例えば、「生産者の声」のページタイトルを、単に「生産者の声」とするのではなく、「滋賀のこだわり果物生産者の声|株式会社〇〇青果」のように設定することで、検索エンジンにページの内容をより正確に伝えることができます。

また、前述したブログやコラムの定期的な更新は、SEO対策としても非常に有効です。専門性の高い記事は、様々なキーワードで検索結果に表示される可能性を高め、ホームページへの新たな入り口を増やしてくれます。SEOは一朝一夕に結果が出るものではありませんが、ユーザーにとって価値のある情報を、適切なキーワードと共に発信し続けるという地道な努力が、将来的に大きな資産となって返ってくるのです。

お問い合わせに繋げるための効果的な導線設計

ホームページの最終的な目的は、会社のブランドイメージを高めることだけではありません。ビジネスである以上、具体的な「お問い合わせ」や「取引の相談」といったアクションに繋げることが最も重要です。 そのためには、訪問者を最終ゴールへとスムーズに導く「導線設計」が不可欠となります。

まず、電話番号やお問い合わせフォームへのリンクは、ホームページのどのページからでもすぐにアクセスできるよう、ヘッダーやフッターといった目立つ場所に常に表示しておくべきです。特に、緊急の注文や相談をしたい顧客のために、電話番号はタップするだけで発信できる形式にしておく配慮が重要です。

また、「お問い合わせはこちら」といったボタンは、単なるテキストリンクよりも大きく、目立つ色でデザインすることでクリック率が向上します。さらに、各コンテンツの終わりに、次にとってほしい行動を促す「CTA(Call to Action)」を設置することも非常に効果的です。例えば、生産者の紹介記事を読み終えたユーザーに対して、「この生産者の果物に関する詳しい資料請求はこちら」というボタンを配置したり、導入事例を読んだユーザーに「まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください」と呼びかけるのです。

お問い合わせフォーム自体も、入力項目を必要最小限に絞り、ユーザーの負担を減らす工夫が求められます。このように、ホームページのあらゆる場所に、次のステップへと進むための「橋」を架けておくことで、訪問者の熱量が高い状態のまま、スムーズにお問い合わせへと繋げることが可能になるのです。

まとめ

本記事では、滋賀県の果実卸売業者が厳しい市場環境を勝ち抜き、持続的に成長していくための新たな武器として、ホームページを活用した「ストーリーテリング」という手法を多角的に解説してきました。価格競争から脱却し、自社ならではの「価値」を伝えること。産地である「滋賀」のブランド力を最大限に活かし、他社との明確な差別化を図ること。そして、BtoBの取引において最も重要な「信頼関係」を深く、強固なものにすること。これらを実現する上で、企業の歴史や理念、生産者との絆、未来へのビジョンといった「物語」がいかに強力な力を持つかをご理解いただけたかと思います。

そして、その物語を効果的に発信するためには、戦略的なホームページの存在が不可欠です。五感を刺激する写真や動画、専門家としての知見を提供するブログ、信頼を裏付けるお客様の声といった魅力的なコンテンツを、ターゲット顧客にとって分かりやすく、使いやすい設計のホームページに盛り込む。さらに、SEO対策によって潜在顧客に見つけてもらい、効果的な導線設計によって着実にお問い合わせに繋げる。この一連の流れを構築することこそが、現代のウェブマーケティングにおける王道です。

ホームページのリニューアルは、決して小さな投資ではありません。しかし、それは単なる経費ではなく、会社の未来を切り拓き、新たなビジネスチャンスを創出するための戦略的な「未来投資」です。自社の強みや想いが詰まった物語を、より多くの人に届け、共感を呼ぶ。その結果、あなたの会社を「選ぶべき理由」が明確になり、価格だけではない、長期的なパートナーシップを求める優良な取引先が集まってくるはずです。この記事が、皆様の会社のホームページ制作やリニューアルを後押しし、輝かしい未来への第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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ozasaオフィスピコッツ株式会社代表取締役社長
1971年奈良県生まれ。京都・滋賀を中心にWeb制作・DX支援を行うオフィスピコッツ株式会社代表取締役。制作歴25年以上、官公庁・大手企業から中小まで多様なサイトを手掛け、Webアワードでの受賞歴多数。ホームページ制作、リニューアル、SEO、補助金活用、多言語EC・オンラインショップ運営支援までワンストップ提供するWebマーケティングのプロ。新規事業立ち上げ支援や自治体DX、各種プロジェクトのアドバイザー、大学校・高校講師、PTA会長など活動は多岐にわたる。琵琶湖観光PRにも情熱を注ぎ、地域企業の売上向上と持続的成長を伴走型で支援し、日々研鑽を続けている。